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ゴルファー、大工、焼き鳥屋…ガンバ大阪の“消えた天才”礒貝洋光51歳はいま何をしているのか?
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/10/10 17:00
ガンバ大阪の中心選手として活躍した礒貝洋光。51歳になったいま何をしているのか?
引退後、一時期体重は130キロまで増えたが、約40キロのダイエットに成功し、現在は約90キロで落ち着いている。それでも、屋根に上れば、いつか安い瓦が割れるんじゃないかと心配だと話す。
以前、テレビではペンキを塗っている礒貝に対し、先輩の塗装工が「サッカーだけじゃなくペンキを塗らしてもセンスがある」と称賛していたが、ペンキを塗るのにセンスなんてないと本人は笑い飛ばす。
「おっちょこちょいって言ったらおかしいけど、塗ったばかりなのを忘れて、そこに手を突くという凡ミスをしたこともある。でも、そういうのは気にならないタイプだから(笑)。
大工さんなんてホントにスゴい。彼らは学校での勉強はできなかったかもしれないけど『さしがね』を持った途端、一寸がどうとかって細かい計算をバンバンする。男の子には、こういうこと絶対にやらした方がいいと思うね」
日雇い仕事もする“消えた天才”なのか?
消えた天才――。礒貝を紹介するたびにそんな表現がついて回る。
95年には日本代表としてサウジアラビアで開催されたインターコンチネンタル選手権の2試合に出場。同年、所属のガンバ大阪では公式戦出場37試合でキャリアハイの13ゴールをマークした。
Jリーグ初期のスター選手として高額の年俸を得ていた時期もあったが、いまでは日雇いの仕事にも従事する日々。その生活は激変したように見えるが、自由気ままな暮らしを貫く彼の周りにはいまでも多くの友人や知人が集まってくる。
「僕のなかではいまも昔も何も変わってなくて、好きなように生きているだけ。いろんな仕事をしているのは誰かが話を持ってくるから、やっている部分もあるし、お手伝い感覚。定宿がないのは、ずっと同じ場所にいられない性格だから。人たらし? それしかできないというか、そういうことしかできないから」
「あのスター選手はいま」というていで紹介されると、そこにはかつての自分や思い通りにいかなかった人生を悔いる主人公がいるものだが、礒貝からはそうしたマイナスの要素はまったく感じられない。
「別に悲運だとかも思っていない」
幼少期から天才と持てはやされ、あのラモス瑠偉から「次の日本代表の10番はオマエだ」と言われた男。短命に終わったキャリアもまた、サッカーであり人生だとあっけらかんと振り返る。