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“女性”の身体に「ありがとう」 元プロバスケ選手がトランスジェンダーをカミングアウトした理由
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by本人Twitter
posted2020/10/11 11:00
自身のSNSにアップしたセミヌードは、乳腺摘出手術前のありのままの姿だ
世界選手権に出場し、初めての彼女も
中学生になるとインターネットの検索で「トランスジェンダー」や「FtM」(Female to Male)という言葉に出会い、抱えてきた違和感の正体に気づいた。バスケットボールに打ち込み、高校は桜花学園高校(愛知)に進学。全国高校女子最多となる計67回の全国タイトルを獲得している強豪校で1年生から活躍した。U-17日本代表にも選ばれ、主将として世界選手権にも出場。アスリートとしての華々しいキャリアの始まりだった。
「そこから、型にはまろうとか、周りに合わせようとかは少しずつしなくなりました。高校1年生の時に初めて彼女ができて、その時も親しい友人にはオープンにしていました。高校3年時にはチームメートもほとんど知っていました。僕がはっきり言ったことはないんですけど、立ち居振る舞いとか接していくなかで僕を男性と感じる方が多かったのであえてわざわざ伝える必要もないかなと。いずれバスケをやめたら男性へのトランジッション(性別移行)を始めていくことも伝えている人は多かったです」
身体を見られることで生まれる恐怖
一方で、女子チームの一員として寮生活を送った部活ならではの苦労もあった。
「日々の生活でいうとロッカールームが一緒だったり、遠征先で部屋も一緒。自分がここにいるのも変な感じというのと、女性の身体を見られることによって、女性と認識されてしまうのではないかという恐怖があったので、なるべく見られないような努力をしていました。共同のお風呂とかは可能な限り、うまくタイミングをずらしていました」
理解ある友人や家族に囲まれ「性的指向(性愛の対象)」については自然な形で受け入れられていたが、「性自認」についてこの時期にあえてカミングアウトするという選択肢はなかった。
「本来男性がわざわざ『僕は男性です』って表明しないように、わざわざ言うことの方が違和感がありました。いまでも自分のことを“チンチンついていない男”って言うんですけど、それが僕のなかで一番しっくり来る表現です」