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新大関・正代の“素顔”とは? 「大関になれたらな~」と思わず漏らした3年前 

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佐藤祥子

佐藤祥子Shoko Sato

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photograph byTadashi Shirasawa

posted2020/10/02 11:03

新大関・正代の“素顔”とは? 「大関になれたらな~」と思わず漏らした3年前<Number Web> photograph by Tadashi Shirasawa

新大関に昇進した正代関。3年前のインタビュー時の貴重な1枚

「エリートっぽいだけですよ(笑)。前相撲からやってよかったです。下積みというほどのことはしてませんが、番付が上がるに連れて対戦相手のレベルも上がっていくから、いきなり強い相手に当たって力の差を感じるよりはよかったと思います。大学の先輩だった(時)天空関(故人)にいつも稽古をつけてもらい、徐々に力を付けて行けたのがよかったです」

 と、今は亡き兄弟子に感謝していたものだった。

あ、そうだ。「現状維持」でいいですかね

 思い起こすと、15年名古屋場所後の新十両会見で戦ってみたい相手を問われ、「誰とも当たりたくない」と答えたゆえに“ネガティブ力士”とのキャッチフレーズが付いてしまった。

「あの会見の時は、なんといってもまだ幕下でしたし……。今は関取の地位にも慣れてきました」

 ネガティブ力士はもう卒業――と思いきや、「読者プレゼント用に、色紙に好きな言葉を」とお願いしたところ、筆を手にしたまま、しばし悩む。下書きの紙に「大関になれたらな~」「目指せ大関?」などと書きながら、

「四字熟語がいいかな? あ、そうだ。父親がこのあいだ、『現状維持が大事』と言っていたんです。今回、これでいいですかね」

「え、『現状維持』ですか? ちょっと夢がなさすぎませんか……」と、スタッフ一同が再び爆笑したものだったが、けして“ウケ狙い”ではないのだ。いかにも謙虚で、自然体の正代らしく、二つ折りにした座布団にちょこんと正座をし、一生懸命に筆を走らせていた。

 

力強くしたためた『至誠一貫』の四文字

 晴れて大関に昇進した今、会見でこう語った。

「目標を口にすると、プレッシャーに弱いから自分を追い込みそうで。今は(プレッシャーとの)付き合い方もわかってきました。これから口にしていこうかなと思います。まだまだ克服までは行かないですけど」

 昇進伝達式の口上には、「相撲道に対して誠実に最後まで貫き通す気持ちを込めた」という『至誠一貫』の四字熟語を盛り込んだ。

 3年前、頼りなげに『現状維持』と書いていた色紙に――今は堂々と『至誠一貫』の四文字を、力強くしたためていた。

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