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田中賢介のセカンドキャリアは「小学校創設」 私財を投げ打ってでも進むピュアな動機
 

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高山通史

高山通史Michifumi Takayama

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photograph byKyodo News

posted2020/10/05 11:01

田中賢介のセカンドキャリアは「小学校創設」 私財を投げ打ってでも進むピュアな動機<Number Web> photograph by Kyodo News

2022年4月に田中氏が理事長を務める小学校が開校予定。世界に挑戦する12歳を学校目標に掲げる

経験を生かした独自のカリキュラム

 それでも夢がある。

 開校初年度は1学年50人の2クラスで、まずは4年生まで計200人の入学を受け入れる。2024年からはフルスペックとなるが、6学年で全校300人を想定。小さな私立小学校になる。校内には自然豊かな北海道の地域性を生かした森があるなど、各所に工夫を凝らしている。英語教育にも重点を置いた特色あふれるカリキュラムも、自身の意向を反映させて、準備を進めている。

 今回提携することでバックアップを得た「学校法人立命館」だけではなく、北海道内の各自治体との連携も模索。広大な北海道内の各地とオンラインで結ぶ、または相互で「交換留学」といった斬新なスタイルでの交流も考えているという。「北海道へ恩返しをしたいですし、地方とも少しでも関わっていけたらと思っています」と青写真を語る。

壮大な挑戦、パイオニアとしての期待

 ここまでは田中氏の志と小学校の紹介に終始したが、この一例を元に視点をずらしたい。

 10月26日、ドラフト会議が開催される。昨年は育成選手を含めて107人が、12球団の指名を受けて入団した。今年も近似値で、新たにプロ野球選手としての扉を開くことになるだろう。

 門戸をくぐる選手がいれば、ほぼ同数の選手が球界を去っていくことになる。

 その中には、指導者やスタッフなどプロ野球界に残る者、またアマチュアを含めて現役続行を目指す者がいる。ごく少数である。多数は、移籍先が見つからないなどの事情で現役続行を断念して第二の人生へと、かじを切っていくことになる。

 田中氏は、20年間現役を続けてトップ選手としての実績を残し、キャリアも形成した。それ故に今回、壮大な挑戦をすることができた。戦力構想から外れる多くの選手とは境遇が違い、単純比較はできない。田中氏は充足して引退を迎えた数少ない1人だが、このマインドは誰にも当てはまり、モデルケースになってほしいと願う。

 プロ野球選手のセカンドキャリアは年々、多様化しているとは認識している。さらに、その志向を変化させ、未知なる分野を開拓していくパイオニアとして、田中氏には期待して注視している。

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