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オリックス田嶋大樹を変えたコーチの叱責 「180度変わった」思考で掴んだプロ初完封 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byKyodo News

posted2020/10/01 07:00

オリックス田嶋大樹を変えたコーチの叱責 「180度変わった」思考で掴んだプロ初完封<Number Web> photograph by Kyodo News

プロ入り後初となる完封勝利をあげた16日の楽天戦。捕手・伏見と笑顔でハイタッチした

「お前は二軍で何やってきたんだ」

 昨年8月21日のソフトバンク戦で、初回から打ち込まれて4回4失点で降板した時、ベンチで高山郁夫ヘッドコーチ兼投手総合コーチに、「お前は二軍で何やってきたんだ」と言われた。

「その時に、僕なんも答えられなくて……」

 その試合を最後に二軍に降格となった。

「そこでもう1回、何やってきたんだろう、なんで答えられなかったんだろうと考えたら、僕は目先のことしか考えてやっていなかったと気づきました。フォームにしても、突発的な、その時の自分がいい球を投げられるフォームでしかなかった。ただ一軍に上がりたくて、上がるためのトレーニングしかやっていなかったんです。だから、最初はよくても後半失速した。

 二軍に落ちてから2週間ぐらいは落ち込んで立ち直れなかったんですけど、そこから、『じゃあ今年の冬は、これをやったと言えるように、それを来年につなげられるようにやろう』と考えるようになりました」

「走るのは大っ嫌いなんですけど」

 今年に向けて何をやるべきかを考えた末に、原点に立ち返り“走ること”を自分に課した。

 小学3年の秋に野球を始めた田嶋は、チームメイトに誘われて毎朝6時に起きて1時間ランニングをした。最初は5、6人で一緒に走っていたが、1人減り、2人減り、結局小6の最後まで3年間、毎日続けたのは田嶋1人だった。中学にあがっても、田嶋は走ることを続けた。

「そういう子供の頃のことを思い返して、自分はとにかく走って体を作ってたな、と。だから今年からまた走って体作ってみようかなと思ったんです。走るのは大っ嫌いなんですけど(苦笑)。でもプロで、一軍で活躍するためには、嫌なことを克服しないといけないと思って」

 オフの期間は、外野のポール間走を以前の倍の40本ほど、毎日続けた。限界だと感じたところからさらに「もう1本」を自分に課して、追い込んだ。

【次ページ】 成果はオープン戦から感じていた

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