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長谷部誠、鎌田大地、堂安律…開幕時点の期待値を現地在住記者がチェック
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/09/25 18:00
開幕戦に出場した堂安律(左)と鎌田大地。日本代表アタッカー勢の熾烈な出世競争にも注目だ
鎌田らしさが出た予測の裏をかくプレー
昨シーズンは全公式戦合計で10ゴール9アシストをマーク。特にヨーロッパリーグでは6得点と際立った数字を残した一方、リーグでは2点止まり。そのことが「心の中でもやもやが残っていた」ことも明かしていた。フランクフルトで上位進出を果たすためには鎌田のチャンスメイクとゴールメイクが欠かせない。
初戦となるビーレフェルト戦でも鎌田ならではのシーンがあった。
78分、フランクフルトが右サイドから細かいパス交換でペナルティエリアに迫る。味方からのパスでゴール前に抜け出してGKと1対1になった鎌田は、誰もがシュートと思った瞬間、ゴール前でフリーになっていたシルバへちょんとパス。GKが飛び出した無人のゴールへ放たれたシュートは、必死にカバーに入ったDFに跳ね返されてゴールにはならなかったが、相手の予測の裏を突いた頭脳的なプレーだった。
こうした変化を加え、ゴールという結果に導く。そのプレーの頻度と精度を高めることがどの試合でも求められているし、ファンもチームも首脳陣もそこに期待しているはずだ。相手がわかっていても止められない、必死で守ろうとしていても裏を取られてしまうようなプレーを、だ。
88分まで起用され続けたという意味
ただ、この日の鎌田は前述のシーン以外で得点機を演出できずにいた。エリア近くでボールを持って積極的に仕掛けてはいた。鋭く切り込み、柔らかく切り返すものの、相手に引っかかったり、うまく味方とかみ合わなかったり。ヒュッター監督もそこを指摘している。
「鎌田は若い選手だ。そういうことも起こりうる。ベストな日ではなかったのは確かだし、だから我々のオフェンスプレーもうまく機能しなかった」
選手ならだれでもうまくいかない日がある。そのことは監督もわかっているから、選手交代や戦術変更でプランBへと移行するのがセオリーだろう。それでもこの日、ヒュッターは鎌田を88分まで起用し続けた。それはヒュッターにとって鎌田はただの選手ではないことの証でもある。
ヒュッターは鎌田のことを「シュルッセルシュピーラー=カギとなる選手」と称し、中心選手としてさらなる成長へ導こうとしている。
昨シーズンも毎試合のように、反省点を持ち帰り、次の試合で修正して成長してきた。監督の深い信頼にこたえるために、これからの試合でまた素晴らしいプレーを披露し、チームに勝ち点をもたらしてみせるはずだ。