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藤井聡太二冠が「最後に泣いた相手」? “最年少棋士”伊藤匠新四段(17歳)とは 

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勝又清和

勝又清和Kiyokazu Katsumata

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posted2020/09/17 18:00

藤井聡太二冠が「最後に泣いた相手」? “最年少棋士”伊藤匠新四段(17歳)とは<Number Web>

3段リーグを勝ち抜き、10月に新四段に昇格する伊藤匠

 小3になった伊藤は同い年の藤井との初対戦を大熱戦の末に制し、負けた藤井が大泣きしたのだ。

 付き添いの母親は藤井が泣くのになれているのか、動揺することもなく落ち着いてあやしていた。それでも藤井は泣き止まなかったが、泣きながら3位決定戦を指し、そして泣きながら勝った。負けて泣くのは珍しくないが、泣きながら勝つのは珍しい。私はまだ藤井の存在を知らず、後でこの子は倉敷王将戦で優勝した愛知の天才少年なんだよと言われ驚いた。一方、伊藤は決勝戦でライバルの“こーせー君”に負けて準優勝だった。

 藤井はその2012年に小学4年で奨励会入りする。だからあれがアマチュア時代に負けて泣いた、“最後の将棋”かもしれない。

 今年の王位戦第1局が終わった後に藤井にその時のことを聞くと「泣いたそうですね(笑)。覚えていませんが」と笑った。

 あのときの表彰の写真には審判長の森内俊之九段と審判の高見泰地七段が一緒に写っている。私の弟弟子の高見はまだ18歳だった。

 3位だった少年がわずか5年後に、NHK杯トーナメントで森内を負かし、C級2組順位戦で高見に勝って昇級するとは夢にも思わなかった。

高校1年1学期で中退

 伊藤は藤井から少し遅れて、翌2013年、小学5年のときに宮田利男八段門下で奨励会入りする。羽生善治九段も入会したのは小6だから、伊藤の小5での入会は早いほうだ。

 宮田は世田谷で三軒茶屋将棋倶楽部を経営し、子供達の指導に熱心に取り組んでいる。口調は少々乱暴だがとても愛情を持って弟子に接し、奨励会幹事や研修会幹事からは「あれほど弟子思いの先生はいない」と言われている。長らく宮田門下の棋士は生まれなかったが、2017年10月に斎藤明日斗四段が棋士になり、その1年後の2018年10月に本田奎五段が上がった。本田はデビューして1年4カ月後に棋王戦の挑戦者になるという活躍を見せている。

 2017年12月、伊藤は中学3年で三段に昇段する。

【次ページ】 羽生―藤井戦「おや記録係が伊藤だ」

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