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堂安律はドイツでまだ“全く無名” 新天地ビーレフェルトで再び成り上がれ
posted2020/09/16 11:40
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph by
Getty Images
オランダの小都市アイントホーフェンは、ヨーロッパ有数の電気機器メーカーである『コーニンクレッカ・フィリップス』(通称フェリックス)社が本社機能を置き、斬新で前衛的なデザインを施したビルや住宅が建ち並ぶ近代的な街並みが特徴です。でもそれは、第二次世界大戦時の戦火で歴史的建造物のほぼすべてが破壊されて以降、この街の住人たちのたゆまぬ努力と情熱によって成された復興の象徴でもあります。
2020年の2月初旬、街の中心部から北に約4キロ先の森の中にあるプロサッカークラブの練習場で、苦闘を重ねる日本人の若者がいました。伸び悩むチーム成績で指揮官が交代し、自らは厳しいチーム内競争で忸怩たる思いを抱いていました。
それでも彼らしい所作でこの荒波を越える覚悟を示していました。
彼と初めて1対1で向き合ったインタビュー取材で受けた印象は“果敢な先駆者”。僕は物事に怯まず、意を決して困難に立ち向かう挑戦的な彼の姿勢に感銘を受け、その前途に期待を抱きました。
心を打たれた彼の言葉は、この一言です。
「せっかく海外に来て、サッカー1つで自分の人生を切り開いていくと決めたんだから、『常にサッカーのことを考えなあかん』と思ってしまう」
ドイツ国内ではほぼ堂安の報道はなし
2020年9月5日、今季11年ぶりにドイツ・ブンデスリーガ1部に復帰したアルミニア・ビーレフェルトは、オランダ・エールディビジのPSVアイントホーフェンに所属する日本代表FW堂安律をレンタル移籍で獲得したとを発表しました。
実は僕、このニュースを日本のメディア報道で知りました。
その数日前から移籍話が取り沙汰されていたので気にはなっていたのですが、率直に言って僕の住むドイツ国内では、ほぼ彼の動向は伝えられていませんでした。
ドイツのメディアでは常日頃から移籍情報を速報で伝えていて、そのレスポンスも早いのですが、スマートフォンに登録しているドイツの有名サッカー誌『kicker』のアプリから堂安移籍の通知は無し。その代わり、同時間帯にドイツ代表MFカイ・ハベルツがチェルシー移籍のためにレヴァークーゼンからロンドンへ向かってメディカルチェックを受ける速報が流れていました。