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大坂なおみの直感vs.アザレンカの論理 コーチを巡る決勝のドラマと逆転劇の「ひらめき」 

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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photograph byGetty Images

posted2020/09/14 11:50

大坂なおみの直感vs.アザレンカの論理 コーチを巡る決勝のドラマと逆転劇の「ひらめき」<Number Web> photograph by Getty Images

大坂なおみが2年ぶり2度目の全米制覇を果たせたのは、フィセッテコーチ(右から2人目)や中村コーチ(左から2人目)の尽力があったからこそだろう。

フィセッテは当時アザレンカのコーチだった

 今思えば実に大坂らしいが、当時まだ私たちは大坂をよく「学んで」おらず、口にする素直な一言一言が新鮮だった。

 このときのアザレンカについていたのがフィセッテだ。

 スタートは前年2015年の2月。2012年と2013年の両年に全豪オープンで優勝し、全米オープンで準優勝したアザレンカだが、左足や右膝のケガに苦しめられ、ランキングはかつての1位から50位台まで落ちていた。

 大坂との初対戦はまさにそこからの復活途上だったが、その2カ月あまりのちに、ツアーでもっとも格の高いカテゴリーのインディアンウェルズとマイアミの両大会を制する<サンシャイン・ダブル>を達成し、トップ5にも返り咲く。

 しかし、さらにそのわずか3カ月後にアザレンカは電撃的に妊娠を発表して、ツアーを離れてしまう。

 当然ながらフィセッテとのコーチ契約は解消された。<未婚の母>などという言葉はもう古いが、アザレンカは間もなくパートナーと破局してシングル・マザーとなり、裁判で親権を争うというタフな期間を過ごす。そのせいでランキングは一時200位台に低迷し、再びフィセッテにコーチを依頼して復活にかけるのは2019年のシーズンだ。前回ほどの成功ではなかったが、それでもツアーで約3年ぶりの決勝に進出した。

 そして大坂とはこのシーズンにも対戦している。全仏オープンの2回戦。序盤戦のハイライトと言われた名勝負は、フルセットの末に大坂が勝利をつかんだ。

「相手をよく知っているのは間違いなく」

 アザレンカとフィセッテの2度目のタッグは1年で終わり、ほとんど間を置かずにフィセッテは大坂の新コーチに就任することになる。

 フィセッテは決勝戦の前にリモート会見で、アザレンカのコーチを長くやっていたことは有利になるかと聞かれてうなずいた。

「それは確かだ。試合の準備として、僕はいつも相手の戦術を知ろうとしているし、動画と統計から相手のことを理解しようとしているから、それ以前に相手をよく知っているというのは間違いなくプラスになる」

【次ページ】 「ナオミはここぞという場面で直感的に」

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大坂なおみ
ビクトリア・アザレンカ

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