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中島翔哉は今季こそポルトで輝けるか。監督の“許し”と同僚の後押し。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byAFP/AFLO
posted2020/09/08 07:00
ポルト1年目は苦い経験をした中島翔哉。新シーズンとなり、名誉挽回なるか。
定位置争い、負傷、そしてコロナ禍。
ところがシーズン序盤、2列目左サイドのポジション争いでコロンビア代表FWルイス・ディアスに遅れをとった。それでも、12月のポルトガル杯の試合で初得点を記録。1月には5試合連続で先発し、レギュラーポジションを手にしつつあるかに思えた。だがこのタイミングで故障をして6試合連続で欠場を余儀なくされ、控えに逆戻りした。
3月7日には久々にリーグ戦で先発し、チーム唯一の得点をアシストしたものの、新型コロナウイルスの感染拡大のため、その直後にシーズンが中断された。
ポルトガルの感染状況は近隣諸国ほどではなく、5月4日、ポルトはチーム練習を再開する。ここで、ほどなく中島は練習場へ来なくなった。
代理人は「ウイルス感染を怖れて、中島一家をサポートしていた日本人のお手伝いさんたちが帰国してしまった。夫人は幼い娘の世話で忙しく、しかも体調を崩したため、中島は家族の面倒を見ながら自宅でトレーニングすることを選んだ」と説明。家族思いの中島にとっては、他に選択の余地がなかったのかもしれない。
とはいえチームメイトも皆、大切な家族がある。リーグとクラブの方針を受け入れ、優勝を目指して練習に励んだ彼らの多くは、中島の行動を「チームへの重大な裏切り行為」と受け取ってしまったようだった。
チーム練習に加われない日々。
6月にシーズンが再開されてからポルトはリーグ戦で着実に勝ち点を積み重ね、優勝に向かって突き進んだが、そこに背番号10の姿はなかった。
その月末から、中島はクラブの練習場の一角で1人で練習を始めた。しかしコンディションが上がっても、監督は彼をチーム練習に加えようとはしなかった。リーグ優勝へ向けて一丸となっていたチームのハーモニーを優先し、残り試合を中島抜きで戦うことを選んだのである。