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MLB独特の大胆なトレード戦略。30球団中27位の低予算球団・パドレスの策とは?
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2020/09/05 20:00
後半戦に入ったMLB。エンゼルスやパドレスなど各球団はトレードを駆使して今後の戦略を練っている。
トレード期限ギリギリに打った「次の一手」
通常なら地区2位ではプレーオフに進出できず、他地区の強豪チームとのワイルドカード争いをすることになるが、プレーオフ出場チームが1リーグ5チームから8チームに大幅増加した今季は、「各地区の上位2チームは無条件」でプレーオフ進出が決まる上に、それ以外で勝率の高い2チームにワイルドカードが与えられる。その圏内にいるパドレスは、トレード期限(8月31日)までに次々とさらなる「次の一手」を打った。
8月29日
トレバー・ローゼンタル投手(ロイヤルズから)
=故障者多発の救援投手陣の補強(1)
8月30日
ミッチ・モアランド一塁手(レッドソックスから)
=対右投手の指名打者と代打の補強
8月31日
ジェイソン・カストロ捕手(エンゼルスから)、オースティン・ノラ捕手(マリナーズから)
=現有戦力で攻撃力が低い、捕手の補強
マイク・クレビンジャー投手(インディアンスから)
=先発投手陣の戦力アップの補強
グレッグ・アレン外野手(インディアンスから)
=代打、代走、守備固めの補強
ダン・アルタビラ投手、テイラー・ウイリアムス投手、オースティン・アダムス投手(いずれもマリナーズから)
=故障者多発の救援投手陣の補強(2)
トレードを上手く活用する、パドレスのこれから
2014年の夏からパドレスの編成責任者となったA.J.プレラーGMは、「次の一手」を打った直後、リモート会見でこう語っている。
「過去数年、我々はファーム組織の拡充を最優先してチーム構築を行い、その層が厚くなったことで今回のトレードが可能になったのです」
考えてみれば、今季もっとも注目されている「次世代の最高選手」タティースJr.や先発パダック投手なども元々は他球団の選手で、彼らがともにマイナー時代、主力選手を放出する際にトレードで獲得した選手たちである。
もちろんパドレスはまだ、何も成し遂げていない。しかし、去年なら口に出しただけで笑われただろうワールドシリーズ優勝という「究極の目標」が、編成の責任者が打つトレードという名の「次の一手」のお陰で、今年はいくらか具体的な「目標」に変わったことだけは、確かだろう。