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MLB独特の大胆なトレード戦略。30球団中27位の低予算球団・パドレスの策とは? 

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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posted2020/09/05 20:00

MLB独特の大胆なトレード戦略。30球団中27位の低予算球団・パドレスの策とは?<Number Web> photograph by Getty Images

後半戦に入ったMLB。エンゼルスやパドレスなど各球団はトレードを駆使して今後の戦略を練っている。

全30球団中27位の低予算球団・パドレス

 彼らは昨季、70勝92敗でナ・リーグ西地区の最下位に終わったものの、フェルナンド・タティースJr.遊撃手やリーグ最多の41セーブを挙げた救援カービー・イェーツ投手、初の二けた勝利を挙げた先発のジョーイ・ルーケイシー、新人クリス・パダック、ディネルソン・ラメット投手らが台頭し、全体的に戦力が底上げされた感じがあった。

 シーズン終了後の補強ポイントは、先発1人ないし2人と、抑え役以外の救援投手を2人ないし3人、二塁手と外野手2人と多く、ナ・リーグ西地区7連覇中の「絶対王者」ドジャースを止めるには「まだ早いか?」と思われた。それにパドレスは元々、同地区のライバルであるドジャースやカブスのような大市場を本拠地とする球団ではなく、今季の選手年俸総額がMLB全30球団中27位の低予算球団である。

 にも関わらず、ウィル・マイヤーズ外野手(2017年から6年総額8300万ドル)、エリック・ホズマー一塁手(2018年から8年総額1億4400万ドル)、マニー・マチャド内野手(2019年から10年総額3億ドル)と高額選手がいる。先発投手や外野手が補強ポイントだったが、アストロズからFAとなってヤンキース入りしたゲリット・コール投手や、カブスからFAとなったニック・カステヤノス外野手のような大物選手の獲得競争に参戦する余裕もなかった。

 これでは八方塞がりなのだが、そこで武器となったのがトレードだ。

5人の補強に成功し、ドジャースを脅かす存在に

 パドレスは昨年11月から12月にかけて「まだメジャーリーグで活躍できるレベルではない」と判断した有望株を交換要員として、複数のトレードを仕掛けた。その結果、ブルワーズから先発ザック・デイビース投手とトレント・グリシャム外野手、レイズからトミー・ファム外野手とジェイク・クローネンワース内野手、さらにアスレチックスからジュリクソン・プロファー内野手、救援のエミリオ・パガン投手らを獲得して、4人目の先発と外野の2人、二塁の補強のために2人の内野手、救援投手1人を補強した。

 FAでは控えめに、実績ある救援左腕ドリュー・ポメランツと4年3400万ドル、クレイグ・スタメン投手とはFAとなった後の再契約で2年900万ドルで契約した。

 パドレスの目算通り、8月31日の時点でデイビース投手はチームの勝ち頭として5勝を挙げ、1番に定着したグリシャム外野手はタティースJr.の13本塁打、マチャドの11本塁打に次ぐ8本塁打を放ち、クローネンワース内野手は二塁に定着。これまたタティースJr.とマチャドに次ぐチーム3位の1.6WAR(Wins Above Replacement=統計分析学セイバーメトリクスによる打撃、走塁、守備を総合的に評価した指標)を記録する大活躍で、ドジャースを脅かす存在になった。

 大事なのはここからだ。

【次ページ】 トレード期限ギリギリに打った「次の一手」

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