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巨人・増田大輝の投手起用は確信犯。
原辰徳監督「いつも最初は笑われる」 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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posted2020/08/07 11:50

巨人・増田大輝の投手起用は確信犯。原辰徳監督「いつも最初は笑われる」<Number Web> photograph by KYODO

8月6日の阪神戦、8回1死からマウンドに上がった巨人・増田大輝。1四球は与えたものの無安打無失点の力投を見せた。

メジャーでは常識的な作戦。

 ただその一方でメジャーでは、大差のゲームで投手を温存して野手を登板させる起用は、常識的な作戦でもあるのだ。

 記憶に新しいところでは'17年6月30日(現地時間)のニューヨーク・ヤンキース戦で当時ヒューストン・アストロズに所属していた青木宣親外野手が6点差の9回に登板。またこちらはシーズン最終戦の消化試合だったが'15年10月4日のフィラデルフィア・フィリーズ戦でシアトル・マリナーズのイチロー外野手も4点差の8回にマウンドに上がっている。

 もちろんメジャーでも野手の登板を「侮辱的行為」と批判する声はある。ただその一方で、連戦が続く過密日程の中で野手が慣れないマウンドに立つことはリリーフ投手を助ける行為と投手陣からは感謝され、リスペクトされるという評価もある。

 近年ではこうした起用が常態化して'19年には野手が登板した試合がメジャー全体で90試合までに増加した。

 そのため昨オフには「野手の登板は延長戦と6点差以上の試合のみ」という新ルールが決められるなど規制の動きがあるのも事実だ(コロナ対策として今季の導入は見送られた)。

内野手5人シフトや坂本の2番起用も。

 昨年の監督復帰以来、メジャー流のチームマネジメントを推進する原巨人にとっては、今回の増田の投手起用も、そうした流れの中の一手ということができる。

「勝つ組織を作っていく上で最大の障害は固定観念。こういうときにはこういうものだと決めつけるのではなく、もっと柔軟に大胆にあらゆる局面に対処していくこと。そういう旧来の常識に囚われない、幅広い思考が大事だと思う」

 原監督の信条の1つだ。

 これまでも内野手5人シフトや坂本勇人内野手の2番起用など、采配面では旧来の日本の常識を打ち破るタクトを振るってきた。

 ただそうした単純な采配、作戦とは違って、野手の登板には相手チームへの“侮辱的行為”かどうかという論議もあり、それはそれぞれの野球観である。

 采配の合理性よりも精神性を重視する見方からすれば、この起用は批判の対象となってもおかしくないかもしれない。

【次ページ】 批判は覚悟で増田をマウンドに送る。

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