オリンピックPRESSBACK NUMBER
十種競技・右代啓祐は毎年、変わる。
「百獣の王」武井壮の“教え”とは?
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO
posted2020/08/01 20:00
「東京陸上選手権」の競技初日に、砲丸投げで14m98の好記録を出した右代。取り組んできた新たな技術の習得に手応えは十分だ。
「リバース」の技術が順調だった。
さらに右代は中1日をおいた26日に、単種目の砲丸投げにも出場した。記録は13m96にとどまったが、試合後の表情はすがすがしかった。理由は「今年からやり始めた『リバース』の技術が順調だった」からだ。
「リバースに関しては(十種競技の)1日目に順調にできていることを確認できていたので、今日は疲れのある中でどんなパフォーマンスをできるかと思っての出場でした。
思った以上に疲れていたので距離は出ませんでしたが、手応えを掴むことができましたね。他の種目でも、もう一度全体的に底上げできそうなきっかけがありました」
リバースとは砲丸を投げた後の制御動作。右代によると「砲丸を前で押し切れるので距離が伸びる」という利点がある反面、「気持ちが焦ると体が前に突っ込んだりするリスクもある」という。
「毎年自分を変化させる」
「でも、記録を向上させるためにはリバースが必要で、ずっとやりたかった技術でした。それが噛み合うようになってきたので、これからもっと磨いて自己ベストにつなげたいです」
すでに五輪に2度出場し経験は豊富だが、右代には「毎年自分を変化させることを自分の中の決め事として持っている」というモットーがある。
「技術を変えたり、考え方を変えたり、新たに何かを取り入れたりすることには危険が伴うと言われます。でも、僕にとっては、何もしないことが一番危険」
そんな哲学の持ち主なのだ。
“毎年、新しいことに取り組む”と決心するきっかけとなった出来事がある。国士舘大学大学院1年だった2009年から2年間、指導を受けた“百獣の王”こと武井壮氏との出会いだ。