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札幌・菅野孝憲の500試合とGK論。
ソンユン移籍、カズとミシャに学び。
text by
斉藤宏則Hironori Saitoh
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/07/25 11:40
横浜FC、レイソル、サンガ、そしてコンサドーレ。菅野孝憲が各クラブのゴールマウスを長く守り続けられたのも、その哲学あってこそだろう。
若手にも率直な意見を求めるカズ。
プロ生活18年目を迎え5月で36歳になった。若い頃と比べて変わったものもあれば、変わらないものもある。そうしてキャリアを重ねていくなかで、ひとつの手本となり得るのが三浦知良の姿勢だという。
「自分はヴェルディのアカデミーにいたし、やはりカズさんはレジェンド。カズさんモデルのスパイクを履いていたこともあった。本人には言ってませんけど、今でも会話をするときは緊張します(笑)」という存在だ。
横浜FC時代のこと。
「カズさんは若い選手に『さっきのオレのプレーどうだった?』とか『いまのどう思う?』とか普通に質問をするんです。誰しもベテランになるにつれて意見される回数は減っていきますし、ましてやカズさんですからね。それでも常に自分に対しての率直な意見を求め続けていた。ああいう姿勢は学ばなければいけない。だからこそカズさんは今でも現役でやれているのでしょう」
現在、菅野は札幌のなかで日本人最年長選手。現実として菅野に対して忌憚ない意見ができるチームメイトはそういないと想像できる。だが、「横浜FC戦後は、ビルドアップのところがうまくいかなかったことについて言われました」。その相手はミシャことミハイロ・ペトロヴィッチ監督。「かなり厳しく言われました(笑)。でも、この年齢であそこまで言ってもらえることもなかなかないので貴重な存在です」と菅野は嬉しそうに明かす。
「自分は1年、1年が節目」
今季で札幌加入3年目を迎える。ひとつの節目と言えるのかもしれない。
だが菅野は「自分は1年、1年が節目」とキッパリ。「そうやってサッカーと向き合い続けてきたからこそ、いまの自分がある。今年ダメだったら来年はない。そういう世界だから」としたうえで、「そうやって毎年、厳しく評価されながら過ごしてきた。引退後は企業経営者とか、逆に自分が評価をする側になりたい」と笑う。
そんな言葉を聞くと、ルーキー時から第一線でプレーをし続け、それが当たり前であるかのように堂々と、そして凛とした雰囲気を醸し出す守護神もまた、見えないところで気持ちを消耗させながら過ごしてきたのだろうか、と思う。