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伊藤華英と『心を整える。』を読み直す。
名著が覆したメンタルの常識

posted2020/07/24 08:30

 
伊藤華英と『心を整える。』を読み直す。名著が覆したメンタルの常識<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

『心を整える。勝利をたぐり寄せるための56の習慣』長谷部誠著 2011年3月刊行。前年の南アW杯でも活躍した日本代表主将による「プロサッカー選手初の自己啓発書」。サッカーファンだけでなく幅広い年齢層の女性にも受け入れられ、150万部の大ベストセラーに。著者印税はユニセフに寄付。

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

PROFILE

photograph by

Kiichi Matsumoto

大ベストセラーとなったサッカー日本代表、長谷部誠の著書。刊行から9年、メンタルの研究実績もある五輪スイマーがその内容と社会的文脈から、ヒットの理由を読み解く。

 メンタルは鋼のように強くあるべき――。そんな古い常識を覆したのが、2011年の東日本大震災直後に出版された、長谷部誠の『心を整える。』だ。

 Jリーグ最終節前日に眠れず優勝を逃した。ストレスが溜まると腹痛と高熱に悩まされる。家族を招待した2軍の初試合で出番がなく監督を恨んだ……。当時の日本代表キャプテンが、著作内でこれでもかと弱みをさらけ出し、同時にそれを克服するための「56の習慣」を紹介。アスリート本としては異例のミリオンセラーになった。

 競泳選手として北京五輪とロンドン五輪に出場し、'12年の引退後にはアスリートのメンタルの研究を行なった伊藤華英も同書を愛読したひとりだ。

「私は大宮出身で家族ぐるみの浦和レッズのサポーター。もともと長谷部選手のファンだったんですね。トイレにJリーグ優勝のポスターを貼っていたほどでした。誕生日が同じという縁もあり、すぐに購入して一気に読みました。オンとオフ双方の気持ちのマネジメント方法がびっしり書かれていて、『生活から練習までここまで細かく決めてるの?』と驚いたのを覚えてます」

 発売当時、伊藤はオリンピアンとしてすでに多くの経験を積んでいた。それでも得るものがたくさんあったという。

 たとえば試合前のルーティーン。長谷部はスタジアム到着の約7分前からミスチルの名曲「終わりなき旅」を流し始め、曲が終わったときにちょうどスタジアムに着くようにする。ピッチに足を踏み入れるときに「じいちゃん、今日もよろしく」と天国の祖父に挨拶をし、戦いのスイッチを入れる。そのプロセスは“儀式”と呼びたくなるほど完成されていた。

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