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「辛い心」を乗り越える
<独占インタビュー>
池江璃花子「何があっても」
posted2020/07/16 07:30
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Shin Suzuki
白血病との闘い、その末の退院から7カ月――。「泳ぎ続ける」と覚悟を決めた天才スイマーは、パワフルになり、とびきりの笑顔で戻ってきた。いかにして、そのメンタルを立て直したのか。絶望の淵をさまよった彼女の言葉に耳を傾けた。
窓から注ぐ自然光がプールに反射している。水面がキラキラと輝いている。
6月下旬、都内にある日本大学水泳部のプールに池江璃花子を訪ねた。
「おはようございます!」
梅雨の合間の太陽に目を細めながらやってきた彼女は、こちらを見つけると、張りのある声で挨拶をしてくれた。
色の白さは際立っている。腕、脚は細い。それでいて何よりも視線を引き寄せるのは、まぶしい笑顔だ。
アップ用のカラフルな水着を身にまとってロッカールームから出てきた池江は、入念なストレッチで体をほぐした後、まずはチームメイトたちとエアロバイクで軽めのインターバルトレーニングを行なった。
「サドルが低いから上げたら?」
池江が仲間のサドルの調節を手伝う。以前と変わらず、リーダー的な存在のようだ。
エアロバイクが終わると、いよいよプールでのウォーミングアップが始まった。ところが、軽快なストロークで水面をかき分けているのが見えたのも束の間、池江は他の選手より早めにアップを切り上げた。そして、何やら意味ありげな笑みを浮かべた。
この日の中心メニューはタイム測定だった。レース用の水着に着替えて再びやってきた池江は、プールの片隅に1人で座って集中力を高めている。スタッフに尋ねると、やけに短いアップは、調子が良いときの池江特有のルーティンだという。