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池江璃花子の辛い心を支えたもの。
独占インタビューで語った“誓い”。
posted2020/07/16 11:50
text by
藤森三奈(Number編集部)Mina Fujimori
photograph by
Shin Suzuki
池江璃花子は、インタビューの途中でこう言った。
「練習を見てもらいたかった」
取材の当日、予定変更があり、練習を見た後インタビューするはずが練習見学は後日となり、インタビューが先となった。
そのコメントが出たのは、自分の回復具合が驚くほどだというくだりだった。それは言葉で説明するより、見てもらうのが一番だという意味だったのだが、その時我々は、まさか想像をはるかに超える練習風景に出くわすとは予想もしていなかった。
練習見学は、蒸し暑い日の午前中だった。チームメイトと一緒に颯爽と敷地に入って来た池江は、もうアスリートだった。
そこからの2時間、我々は、それまでに持っていたイメージがどんどん更新される不思議な時間を過ごした。
ニヤリと笑みを残して。
ナンバー1007号(7月16日発売)で、見る側をも笑顔にさせる、ビューティフル・スマイルを見せてくれた池江璃花子。巻頭8ページにわたる独占インタビューでは、白血病と闘い、再びプールに戻るまでのメンタル面の揺れ動きを語ってくれた。
「何があっても水泳を続ける」という覚悟は、入院をする時から決まっていた。治療中の自分を支えたのは、まさにその気持ちだったという。でも、「つねにポジティブではいられなかった」。ネガティブなところから立ち直ってこられたことが自分の成長なんだと力強い目で答えた。
さて、練習風景に話を戻そう。
池江は入念なストレッチの後、プールに入り、アップのためにみんなと一緒に何本か泳いでいた。しかし、気づくと、池江だけプールから上がっている。具合が悪いのか、と心配をしていると、スタスタとプールサイドを歩いてこちらに向かってきた。そして、我々に、ニヤリと笑みを残して去って行ったのだ。
その笑顔がまたあまりにも輝いていたので、狐につままれた気分だったが、その時のことを池江はこう言う。
「あの日はすごく調子が良かったんです。だから早めにアップを終えて、タイム測定に備えました。昔からそうなんです。アップがいらないくらいのこともあります」