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村上春樹さんが3時間語った、
走ること、書くこと、勝負について。
posted2020/07/16 15:00
text by
藤森三奈(Number編集部)Mina Fujimori
photograph by
Nanae Suzuki
「村上春樹と『ナンバー』に接点があるのか?」と思う人もいるかもしれない。
これが、大いにあるのである。
創刊40周年を迎えた「ナンバー」と村上さんとの付き合いは、長きにわたる。
創刊から2年、1981年4月から「CITY SCRAPS」(その後THE SCRAP)という連載が始まった。『風の歌を聴け』で作家デビューをしたのが'79年。ちょうど専業作家となった頃のことだ。この連載は、「エスクワイア」や「ローリングストーン」などアメリカの雑誌の記事を題材にしたエッセイで、スポーツとはあまり関係がなかった。その後、'86年まで続いた。
'84年ロス五輪のときに出された「ナンバー」特別増刊では、「オリンピックにあまり関係ないオリンピック日記」を寄稿。日本にいながらロスで開催されているオリンピックについて絶妙な距離感で綴る痛快なエッセイだった。
そして2000年、シドニー五輪の際には、編集者とともに現地に滞在し、「世の中にオリンピックくらい退屈なものはない、のか?」を「ナンバープラス」に寄稿した。その後、『Sydney!』として書籍化されたこの作品は、いまでもスポーツファンに読み継がれる名著となった。
最後の登場から9年がたった。
当時はトライアスロンをされていた村上さんだが、ランニング歴は最初にナンバーの連載を始めた頃からだという。その後「ナンバーDo」が出演をお願いしないわけがない。走ることについてのロングインタビューに応じてくださったのが、2011年のこと。
その時のインタビュアーが、後記にこう書いていた。
「春樹さんはそうしょっちゅうインタビューに応じてくれる作家ではない、というよりごくまれにしかインタビューのチャンスはない」
間違いなかった。あれから9年が経った。今年は五輪イヤーのはずだった。小誌が村上さんに出ていただきたいと願う気持ちは、最高点に達していた。
そこに現れたのが、ノンフィクション作家の高橋秀実さんだった。高橋さんが、70~80代のマスターズ選手に取材をし、一冊にまとめた『一生勝負 マスターズ・オブ・ライフ』がナンバー・ブックスから発売されたばかりだった。
高橋さんから「春樹さんは、70代になった今もまだ走っているらしいけど、まさにこのテーマにふさわしいと思いませんか。書籍の特別編としてインタビューしてみたい」との連絡があった。
旧知の間柄ということもあり、村上さんに快諾頂き、久しぶりに「ナンバー」(7月16日発売号)登場となったわけである。