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カントナ級存在感でマンUを正常化。
新顔B・フェルナンデスが生む違い。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2020/07/08 08:00

カントナ級存在感でマンUを正常化。新顔B・フェルナンデスが生む違い。<Number Web> photograph by Getty Images

ユナイテッドが待ち焦がれたチャンスメーカー、ブルーノ・フェルナンデス。赤い悪魔復権に欠かせない中盤のキーマンだ。

最強リバプールにも孤軍奮闘した。

 B・フェルナンデスがマンUの選手として見せたファーストタッチは、4-2-3-1システムの2列目右サイドで先発したフアン・マタへのナイスなパスだった。前半15分過ぎには、1トップのアントニー・マルシャルにスルーパス。新顔ながらも立ち上がりから声を出し、ボールと周囲の動きを要求しながら、相手ゴールへ向かう積極姿勢を促していた。

 その3日前、マンチェスター・シティとのリーグカップ準決勝第2レグ(合計2-3で敗退)では、ジェシー・リンガードが2トップの背後で先発していた。

 ユース出身のリンガードは、縦パスを狙えた場面で背後のフレッジにボールを戻して、スールシャールに見切りをつけられた。対照的に、移籍の翌々日に先発フル出場したB・フェルナンデスは、チームでの練習が正味1日だけでも元FWでもある指揮官が「マンUのチャンスメイカー」に求めるプレーを見せようと奮闘していた。

 ウォルバーハンプトン戦の33分には、ペナルティエリア外から移籍後初のシュートも放った。結果は枠外。同じくポルトガル人のMFが主力にいる敵軍のサポーターからは、「ルベン・ネベスの劣悪版だな」とのチャントで野次られもした。

 しかし、アウェイでの第23節リバプール戦(0-2)からノーゴールだったチームの中で、躊躇なくゴールを狙っていたのはB・フェルナンデスのみ。その5分後には枠内へ放ったミドルで、やはりポルトガル人の相手GKルイ・パトリシオにセーブを強いている。

 マンUで最初のイエローカードを受けたのは55分。ボランチのフレッジがラウール・ヒメネスにかわされてしまったのを受けて、テクニカルファウルで止めてみせた。それは勝利への責任感と執念が窺えるシーンでもあった。

周囲を生かすポジショニングとパス。

 移籍直後からマンUの主力らしい姿を見せたB・フェルナンデスだが、チームを活性化した最大の要因は、やはり周囲を生かして力を引き出すことにも繋がる、優れたポジショニングとパスワークにある。

 好例は、第31節シェフィールド戦で2得点に絡んだプレーだ。

 44分のチーム2点目に至る過程では、相手ペナルティエリア手前の左サイドでノーマークになってパスを受けると、中央に流れながらキックフェイントで2人かわし、その間に右インサイドでフリーになったポール・ポグバにボールを叩いたことで、マルシャルにアシストした右SBアーロン・ワン・ビサカのクロスが可能になった。

 74分の3点目では、ポグバがハーフライン付近から入れたクサビをヒールキックで繋ぎ、マルシャルがマーカス・ラッシュフォードとのワンツーからネットを揺らした。

 パス成功率に関しては、移籍後の8試合で75.3%とチーム内でも下から数えた方が早い数字にとどまってはいる。だが、その背景には閃きあるパスを含め、無難な選択ではなく勇敢な選択を好む基本姿勢がある。

【次ページ】 ポグバとの縦関係も新たな見所。

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ブルーノ・フェルナンデス

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