JリーグPRESSBACK NUMBER
小笠原満男×代表シェフ西芳照対談。
食育とペペロンチーノ愛、蛙料理!?
posted2020/07/07 10:00
text by
池田博一Hirokazu Ikeda
photograph by
L:Hirokazu Ikeda R:Takuya Sugiyama
小笠原 西さん、ご無沙汰しています! 新型コロナウイルス感染症の影響で大変な状況ですが、西さんの現状はどうですか?
西 満男ちゃんもお元気そうで。こちらは新型コロナの影響で、お客さんの来店数がガクンと減ってしまい、いわきFCパーク内にある店舗はテイクアウト専門にして、50人くらい入るお店はクローズ。こちらはなかなかお客さんが戻って来ていない状況です。
小笠原 大変ですね……。今はいわきFCの選手の食事も担当されているんですよね?
西 そうですね。いわきFCの選手とアカデミーの子どもたちの食事も作っています。このコロナ騒動前には、トレーニングを終えた中高生や女子の100人全員に提供する予定だったんですが、それはなくなりました。いまは県外から来ているアカデミー生18人に、月曜から土曜までの夕食を提供しています。
小笠原 僕もいまテクニカルアドバイザーという役割をもらって、アントラーズアカデミーの子どもたちを見ているのですが、食べることの重要性はアントラーズでも大事にしていることです。これまで西さんには代表でいろんなものを食べさせてもらいましたけど、「トレーニングと同じくらい食べることは大事だ」と話しています。ただ、指導者はピッチの中しか見えない部分があって、実際に食べているところを見るのは遠征先くらい。こっちが何を言っても最後は自分次第で、まずは言い続けないといけないなと感じています。
西 アカデミー年代には、小さいときから何をどう食べたらいいのか、今日はなぜこれを食べるのかを教えてあげることも大切です。満男ちゃんの言う通り、小さいうちから食習慣として、常に言葉で伝えることが将来の体づくりにつながっていくのかなと思います。日本人は鉄分やカルシウムが足りないことが多いですし、特に女子は生理中に貧血を起こすことが多くあります。女子日本代表でも8割から9割は鉄分が足りない状況にありましたから、やはりそういったことに気をつけながら食事を出すようにしています。
メッシと同じものを食べても……。
小笠原 西さんの前で言うのは恥ずかしいけれど(笑)、僕はあまり食事に気をつかう方ではなくて、そのときに食べたいものを食べるタイプでした。それが、自分の体が欲しているものだろうと。ただ、試合前は炭水化物を多めに、試合後はタンパク質を多めにというのは、講義で聞いていたので意識していました。あれもこれも食べないといけないとなると、ストレスになるし、自分としては嫌だったので。実際にあれこれ気にし過ぎて、しんどくなって自分のリズムを崩すという選手がいるのも事実です。誰かの食べ方を真似するのもいいけれど、最後は自分に合うものや必要なものを見極める力も大事かなと思います。たとえば、リオネル・メッシと同じものを食べたからといって、同じプレーができるわけではないですからね。
西 たしかにそうですよね(笑)。選手の皆さんは、これまでと比べて体のキレが違うと感じて、たとえばグルテンフリーを始めたり、いろいろなチャレンジをしていると聞きます。人の真似をするのではなく、自分に合うものが何かを探してチャレンジすることが大事かなと思います。
小笠原 本当にそうですね。ただ、これはプロの考え方だなと思っていて。アカデミーの子どもたちは、自分で作って食べるわけではないので、コンビニとかインスタントや冷凍食品で済ますのではなく、きちんとバランスの取れた食事と量をとることが大事。アントラーズでは、ユースの選手の食事写真を朝、昼、晩とすべてポータルサイトに載せて、すべての年代の選手と保護者が見られるように発信しています。食の重要性を親御さんにも伝えていく必要があるなというのは、アカデミーで働いて感じたことですね。
西 今の時代だと、親御さんが共働きでスーパーのお弁当を買ってきたりというのはよくありますよね。いわきFCで食事提供をしていていいなと思うのが、練習後すぐに食事が取れること。練習終了30分後におにぎり1つ食べて、1時間後にバランスのいい食事を取る。すぐに食事をとれば筋肉の損傷も疲労も少なくなると言われていますが、練習が終わってシャワーを浴びたらすぐにご飯ですから。すごく恵まれていて、「子どもたちはそこまで分かっているのかな?」なんて思うこともありますが(笑)。