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コロナ禍の今こそ阿炎の活躍が必要!
7月場所に絶対見たい、あの笑顔。
text by
飯塚さきSaki Iizuka
photograph byKyodo News
posted2020/07/02 19:00
阿炎の師匠は、あの“突っ張りの寺尾”錣山親方である。7月場所では、この突き押し相撲を堪能したい。
阿炎の魅力その2:愛されるキャラクター
人物紹介をするとなると、どうしても彼のキャラクターばかりが前面に出てしまうことになるのだが……その人懐っこさが群を抜いているのだから仕方がない。
とにかく人が好きなのだろうが、誰にでもあの明るさでどんどん話しかけにいくので、いつまでもあどけない少年のような雰囲気になってしまうのだ。こうして人に対して分け隔てなく接する彼は、昔から多くの人に愛されて育ってきたといえる。
また、根っからの「正直さ」も彼のいいところだ。
思い出深いシーンとしては、初めて横綱・白鵬を破って金星を挙げたときの勝利者インタビュー。
マイクを向けるNHKのアナウンサーに対して「早くお母さんに報告したいから、もう帰ってもいいですか?」と、自らインタビューを切り上げてしまったのだ。あまりに自由過ぎて、正直過ぎて、見ていて思わず笑ってしまった。
後日、この時の話を聞いてみた。
「勝った後、興奮状態のまますぐにインタビュールームに連れていかれたので。でも、そのとき既に泣きそうだったから、一刻も早く帰りたかったんですよ(苦笑)。とにかく早く帰って、大声を上げて、喜びを表現したかった。その時に電話した母自身も、もう何を言っているのかわからないくらい泣いていたし、そんな母の声を聞いて、自分も大泣きでした」
このお母さんとのエピソードを聞いたとき、改めて、彼の心の清らかさと純粋さ、優しさに触れた気がした。
阿炎の魅力その3:義理堅さ
普段からニコニコと明るい阿炎は、語り口調も軽い、まさに現代っ子なのだが、実は非常に義理堅い性格であることも知られている。ここが……多くのファンが“ギャップ萌え”しているポイントである。
力士の行きつけの店を紹介しながら、食生活について話を聞く筆者の連載記事「力士のエビスコ!」(月刊『相撲』/ベースボール・マガジン社)で、阿炎は両国にある豚料理の店「わとん」を紹介してくれた。そこは、自身がかつて通っていた草加相撲クラブの恩師が経営する店だった。
「ここは、僕が本当に心許せる場所。恩師はもちろん、相撲で素晴らしい人たちに囲まれて育ったからこそ、いまも自分が自分らしくいられています。そういう大事な義理は、絶対に忘れないようにしているんです」
また同部屋で同郷の先輩・彩には、公私にわたり兄のように慕う。一度十両から陥落し、長い低迷期があった阿炎。生活が荒れ、相撲を辞めようかとさえ思っていた彼を再度奮起させたのが、彩だった。
「彩さんに『いつまで腐っているんだ! 目を覚ませ!』って怒られたとき、図星だと思いました。自分が甘えているだけってわかっていたけど、誰かに指摘してほしかったんです。そのとき、彩さんが自分の思っていたことを全部言ってくれて、稽古場でも目をかけてもらえて。そこから僕は変わりました」
普段はやんちゃなイメージの阿炎だが、こうしたエピソードを耳にすると、彼への印象がまた少し変わって見えるのではないだろうか。