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死闘の中盤。山中慎介は鼓膜が破れ、
岩佐亮佑は「何か星が飛んで……」 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph by Hiroaki Yamaguchi

posted2020/07/02 11:05

死闘の中盤。山中慎介は鼓膜が破れ、岩佐亮佑は「何か星が飛んで……」<Number Web> photograph by  Hiroaki Yamaguchi

序盤はリードを許したものの、中盤からは王者・山中がペースを握った。

血管が切れてしまうんじゃないかという感覚。

 王者の左が“神の左”と称される前。強烈すぎる左を食らったダメージはあった。

 コーナーに戻ったときのこと。

「あんなパンチ今までもらったことないですからね。頭がガンガンして、何か星が飛んでいるようなイメージ。ダメージと言うなら、そうかもしれない。血管が切れてしまうんじゃないかってそんな感覚を持ったのを覚えています」

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 9回を終えて、残すは1ラウンドのみ。

 試合後にオープンとなるジャッジの採点は2者が86-85、もう1者が87-85で山中を支持している。だが、10回に岩佐が取ればドローになり、逆にダウンを奪っての判定なら岩佐の逆転勝利となる。

のちに妻となる沙也乃さんが初めて観戦に。

 ハイレベルなノンストップの攻防にオーバーヒート気味だった後楽園ホールが、再び沸点へと向かう。両者への力いっぱいの声援が、背中に送られる。

 岩佐は崖っぷちに立たされつつも、吹っ切れていた。山中は逆に目の前にある世界挑戦権をしっかりつかみ切ることを意識する。のちに妻となる沙也乃さんが初めて山中の試合を観戦に訪れた試合でもあった。

 シーンスケ、シーンスケ。

 場内に響く自分へのコールがよく聞こえた。地元の滋賀からバスで7時間かけて350人の大応援団が駆けつけてくれていた。世界チャンピオンになるという自分の夢を後押ししてくれるその声一つひとつを己の力に変えていこうとする。

「ラストラウンド!」

 リングアナウンサーの声に反応する両雄。

 山中慎介は声援に応えるように左拳を上げた。絶対に勝つという決意を示すように。

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