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ジョコビッチ陽性と感染予防の不備。
テニス界に突きつけられた難題とは。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2020/06/24 19:00
ジョコビッチ熱い思いがベースで始まった大会だったが、感染者が続出。テニスのツアー開催の難しさを今一度痛感する一件に。
ほぼ満員の会場、社会的距離は?
なぜ、「やっぱり」「ほらみろ」なのか。大会は最低限の予防対策さえとっておらず、オンコートでもオフコートでも選手やその側近の者たちの行動はあまりにも能天気だった。
開幕戦の舞台だったセルビアの首都ベオグラードには、4000人のファンが詰めかけたそうだ。国民的英雄であるジョコビッチのほか、ドミニク・ティーム、アレクサンダー・ズベレフ、ディミトロフといった、絵になる人気選手を集めたのだから当然で、最初に売り出した1000枚のチケットはわずか7分で完売したという。
そこでさらに1000枚を追加で販売。これもすぐに売り切れ、そのほか2000枚をスポンサーなどに配ったと報じられていた。
結局、会場となったアカデミー(ジョコビッチ自身が所有)のセンターコートはほぼ満席となり、そこはソーシャル・ディスタンスなどおかまいなしで、マスク姿などどこにも見られなかった。選手たちは試合後、ネットをはさんで通常通りハグで称え合い、最後は大勢のボランティアスタッフたちもまじえて体が触れ合う距離で集合写真なども撮っている。
パーティー含めて反省のジョコだが。
さらに、そうした光景以上に目を疑ったのが、試合が終わった日曜夜の盛大なパーティーのようすが映し出された動画だ。人が密集したナイトクラブで、レインボーダンスを踊り、上半身裸になって歌うジョコビッチたちの姿は、少なくとも今の日本のスポーツ界にある意識とは恐ろしいほどの開きがあるように感じたものだ。
「僕たちは健康管理のあらゆる手順を踏んできたはずだし、開催地域の感染状況は落ち着いており、この慈善活動を通じて人々が団結する機会になると思われたが、それは間違っていた。まだ早すぎた」
ジョコビッチは自身の感染を確認したあと、SNSにそう投稿しているが、残念ながら同情の意見は少数だ。ジョコビッチがクロアチアでの検査を拒否し、セルビアに戻ってから検査を受けたこともなんとも印象が悪い。
セルビア国内では、このイベントの開催までに1万2000人以上の感染が確認されており、252人が死亡していたという。ヨーロッパの中では極めて少ないが、最近の1日ごとの新たな感染者の数は日本とほぼ同様の70人程度。警戒心の差はお国柄だとしても、「早すぎた」と気付くのがいくらなんでも遅すぎると言われてもしかたがない。