濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
今こそ齋藤彰俊戦が必要だった……。
ノア「潮崎豪時代」への通過儀礼。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byPRO-WRESTLING NOAH
posted2020/06/20 11:00
激闘の中で三沢の存在を濃厚に感じさせた潮崎と齋藤。試合後の齋藤は「シオ、ありがとう!」と叫んだ。
自らと団体の歴史を味方につけた新王者。
いま思えば、三沢がいなくなったノアを「次はお前しかいない」と託された時の潮崎は20代だ。あまりにも酷な期待だった。だが紆余曲折を経験し、30代後半を迎えた今なら“背負う”ことができる。
同じ緑のコスチュームを着る清宮からベルトを奪ったフィニッシュはムーンサルトプレス。キャリア初期の得意技であり、小橋の代名詞でもある。
自分と団体の歴史を味方につけた新チャンピオンは「I am NOAH!」と高らかに宣言した。ようやく、そう言い切ることができたのだ。
そして“有観客”の未来へ。
そんな潮崎が、チャンピオンとしてあらためて齋藤と対戦するのは必然だった。ノアの年表に「潮崎時代」を刻み込むための、いわば通過儀礼だ。儀式としてもエルボーとエメラルド・フロウジョンが不可欠だったし、そこで終わらずに(小橋から受け継ぎつつも自分の名を冠した)豪腕ラリアットで仕留める必要があった。
本当に、すべてのことに意味がある闘いだった。
「俺も潮崎も、次に進むために今日という門をくぐった」(齋藤)
「挑戦状を受け取った時点で、前に進むための闘いをするしかないと思っていた。齋藤彰俊とやったからこその輝きを、ベルトが得たと思います」(潮崎)
中継の最後には、7月18日の後楽園ホールから“有観客興行”を再開することが発表された。無観客の激闘で過去と向き合い、その上でノアは未来へと向かう。