濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
今こそ齋藤彰俊戦が必要だった……。
ノア「潮崎豪時代」への通過儀礼。
posted2020/06/20 11:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
PRO-WRESTLING NOAH
プロレスは“意味”を味わうジャンルだ。
なぜこの対戦カードが組まれたのか。タッグを結成する理由は何か。フィニッシュ技の選択。あらゆる場面で“意味”が問われる。自分の行為や言葉に魅力的な意味付けができることは、名レスラーの条件と言っていいだろう。
6月14日に配信されたプロレスリング・ノアの無観客大会、メインイベントで潮崎豪(崎の字は山偏に「立」と「可」の表記)vs.齋藤彰俊のGHCヘビー級選手権試合が行なわれた。それは“意味”が詰まった闘いだった。
チャンピオンの潮崎は“三沢光晴最後のタッグパートナー”である。挑戦者の齋藤は“三沢光晴最後の対戦相手”だ。6月14日は三沢の命日の翌日であり、潮崎がGHCヘビー初戴冠を果たした日でもある。
現在は大会の前半戦に登場することが多いベテランの齋藤だが、この試合ではポテンシャルを全開にした。自ら「挑戦状」をしたためて臨んだ試合だ。燃えないはずがなかった。
打撃の1発1発が重い。腕攻めは的確で執拗、エプロンの潮崎をジャーマンでフロアに投げ捨てる場面もあった。
齋藤のバックドロップと潮崎のエルボー
終盤に見せたアイアンクロー・スラムは、三沢の最後の試合で齋藤がタッグを組んだバイソン・スミスの技だった。スミスもまた、2011年に急逝している。
そしてバックドロップだ。三沢が最後に受けた技、齋藤にとってもプロレスファンにとっても忘れられない技。それをここで出した。ここで出すことに意味があった。
バックドロップをカウント2で返した潮崎はエルボーを連打していく。ローリング・エルボー、さらにエメラルド・フロウジョン。これが誰の技であるかは説明するまでもない。
この2人だからこその“意味”、あるいはメッセージを大量に発して、最後は潮崎が「豪腕ラリアット」を決めた。2度目の防衛である。