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NBAデビューに達成感はなかった。
渡邊雄太が描き続ける未来の自分。
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byGetty Images
posted2020/06/15 08:00
2018年10月27日。NBAデビューした渡邊雄太の目に映っていたものは、さらに先の景色だった。
ツーウェイ契約、今はありがたい。
一方、ハッスルにいるときは毎試合スターターで平均34分出場している。ハッスルのヘッドコーチ、ブラッド・ジョーンズは、渡邊のことを、「得点やリバタンドなどの数字を残すかどうかとは関係なく、試合を通して使いたくなる選手」だと言う。
「いいディフェンスをするし、正しい判断をするし、チームの戦術をすべて理解していて、いつも正しいポジションを取っている。常に集中していて、注意散漫ということがない。これはプロとして重要なことだ」
とジョーンズHCは絶賛する。
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試合のレベルが高く、待遇もいいものの、ほとんど出場時間がないNBAと、試合には出られるが、NBAと比べ試合のレベルも待遇面でも見劣りがするGリーグ。その2つの世界を行ったり来たりする生活を、渡邊は「今はそれがありがたい」と言う。
「NBAでは今はなかなか試合に出してもらえない。Gリーグでは多くのプレータイムをもらい、自分がこういうことができるようになったとか、ここをもっと直さなきゃいけないとかが明確に見えてきている。ルーキーシーズンにツーウェイという契約をもらえたっていうことは、すごく自分にとってありがたいと思っています」
やっぱりNBAで試合をしたい。
Gリーグも経験しているからこそ、目指すのはNBAとの思いを一層強くしている。
「GリーグとNBAでは格差がありすぎるので。Gリーグを批判しているわけじゃないですけれど、ただやっぱりNBAでやったほうが、当然すべての面で上。そういう意識は余計に強まってはきますね」
ジョーンズHCは、渡邊には“静かな自信”と“静かなタフネス”があると描写する。一見、そうは見えなくても、実際はどんな相手でも向かっていく闘争心を持ち、また誰にも負けないという自信も持っているというのだ。渡邊にそれを伝えると、「そうだと思います」と同意した。
「アメリカ人はどっちかというと自信を完全に表に出すタイプ。自分の中にある自信は、自分が毎日どれだけ練習しているかわかっているところからきている。それが、自分の心の中で大きな自信になっていると思います。タフさは大学4年間でとにかく鍛えられた。そういうのは、確かに自分の中にはあるかなとは思います」