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NBAデビューに達成感はなかった。
渡邊雄太が描き続ける未来の自分。
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byGetty Images
posted2020/06/15 08:00
2018年10月27日。NBAデビューした渡邊雄太の目に映っていたものは、さらに先の景色だった。
NBAとGリーグを行ったり来たり。
渡邊がグリズリーズと交わした契約は、本契約とは別枠の“ツーウェイ契約”だ。別枠とはいえ、各チーム2選手にしか与えることができないのだから、その契約を得ることは決して簡単ではない。それだけに、'18年に起きた出来事の中では、その契約獲得が一番達成感を感じたことだと言う。
ツーウェイ契約とは、昨季からNBAが導入した若手選手向けの契約で、下部リーグ(Gリーグ)のチームに所属しながら、シーズン中45日までNBAチームで試合に出たり、練習に参加することができる。実際、去年10月半ばから始まったシーズンで、渡邊はNBAのグリズリーズとGリーグのメンフィス・ハッスルの間を行ったり来たりして過ごしている。12月末までにNBAの練習や試合に招集されたのは約20日。そのうち、実際にグリズリーズの試合に出たのは3試合だった。
一番緊張した、楽しかった試合。
試合に出た3試合のなかで一番緊張したのは、2試合目、11月14日のミルウォーキー・バックス戦だったという。この試合では、初めて“ガーベッジタイム”ではなく、前半から使ってもらえた。チームに故障者が多く、主力の負担を減らすためという事情ではあったが、それでも、まだ勝敗が決していない時間帯に7分46秒プレーできたことは、特別だった。
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「あの緊張感の中で、敵地で、しかもバックスという好調なチーム相手の試合。課題はまだまだ見えましたけれど、ブロックできたり、リバウンドを2本取ったり、やっていて楽しい試合でした」
今はグリズリーズに呼ばれても試合に出られずに終わることも多く、まだ戦力として計算されていない状況が続いている。それでもベンチから、自分が出たら誰とマッチアップして、どんなプレーをすればいいかを考えながら試合を見ているという。