熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
カズが変えたブラジルの日本人観。
“サッカー下手”を覆す偉大な功績。
posted2020/06/09 18:00
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Hiroaki Sawada
7月4日のJ1再開を前に、その奮闘を目撃していたブラジル在住のライター沢田啓明氏に全5回シリーズで記してもらった。第3回はカズがブラジル全土に認められた、サントスでの活躍ぶりについて。
カズは1990年2月、サントスと再び契約を結ぶ。3年4カ月の間、ブラジル各地の4クラブを渡り歩いて大きく成長しての帰還だった。
監督はペペ。現役時代、サントスでペレらと黄金時代を築いた左ウイングで、750試合に出場して405得点をあげた大スターだ(1991年から92年まで、読売クラブの監督も務めた)。
当時、地元メディアやファンからは「日本人が役に立つのか」という懐疑的な声もあった。しかしペペはカズの能力を高く評価し、人間性も愛した。
2月7日、サンパウロ州選手権第3節でサントスはホームにキンゼを迎え、カズは後半途中から初出場した。
その4日後のボタフォゴ(SP)戦で初先発し、以後、ほとんどの試合で先発するようになった。
宿敵とのダービーで1得点1アシスト。
彼の名を、ブラジル全土に轟かせた試合がある。
4月29日、当時11万人を収容した巨大なモルンビー・スタジアムで宿敵パルメイラスとのダービーマッチが行なわれた。
カズはこの試合でも先発し、後半12分 、敵陣左サイドでスルーパスを受けると、ドリブルでマーカーを翻弄して中へ切れ込み、右足でループシュート。これがGKの頭上を越え、ファーのサイドネットを揺すった。
サントスでの初ゴール。観衆の大歓声を浴び、恍惚とした面持ちで両手を突き上げた。
その後、パルメイラスに同点とされたが、後半38分に中盤でボールを受けると、右サイドを走るパウリーニョへ絶妙のパス。パウリーニョはディフェンダーをかわすと、左足で強烈に叩き込んだ。カズはパウリーニョと肩を組み、一緒にでんぐり返しをして喜んだ。
カズの2得点に絡む活躍でサントスが快勝。この試合のMVPとしてテレビのインタビューを受けた23歳は、日本語で「パルメイラスはサントスのお客さんです」と語る茶目っ気を見せた。