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トルシエJ、川口と楢崎の序列って?
名守護神バツが語る伝説のGK合宿。 

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フローラン・ダバディ

フローラン・ダバディFlorent Dabadie

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photograph byKyodo News

posted2020/06/05 11:30

トルシエJ、川口と楢崎の序列って?名守護神バツが語る伝説のGK合宿。<Number Web> photograph by Kyodo News

サッカー日本代表候補の合宿で指導する元フランス代表GKのジョエル・バツ氏。川口や曽ヶ端らを熱血指導した。

自身のEURO制覇とW杯のミス……。

 初めての大舞台に抜擢され、プラティニのチームの守護神として活躍したバツ氏は、優勝した'84年ユーロを懐かしそうに語ってもいました。

「あの時はまだ若く、怖いもの知らずでした。世界一の選手だったプラティニがいるチームの波に乗っただけです。準決勝のポルトガル戦だけは私のビッグセーブが数回チームを救って、自信になりましたけどね」

 一方、一番思い出したくない話を強いて聞いてみました、'86年大会の準決勝で、天敵西ドイツに完敗した試合のあのヘマ……。

「私たちは大会をすでに優勝したかのように、ブラジル戦の勝利を祝ったのです。私たち選手を筆頭に、ファン、メディア、関係者、みんなの責任です。ブラジル戦に照準を合わせていたのは事実で、ガソリン切れでした。プラティニは大会の間じゅうアキレス腱炎で酷い状態にあり、黄金の中盤(プラティニ、フェルナンデス、ティガナ、ジレス)は機能しませんでした。

 そう、あの早い時間にブレーメのFKの弾道の読みが外れ、ヘマをしてしまったのです。キャリアで最も悔しい失点の1つを喰らってしまいました。あの大舞台でね、これも人生。マラドーナのアルゼンチンと決勝を戦いたかったのですが」

失敗を永遠に批判されるからこそ。

 今も完治していない傷。しかし、それを生かした教訓を'99年の御殿場合宿の際に10人の日本人GKやコーチたちに教えてくれました。

 GKなんて冒険家のような存在で、孤独なんです。嵐(攻め込まれる時間帯)が来たとき、他のセイラー(ディフェンダー)も頑張りますが、メインマストのてっぺんに上って作業をするのは1人だけ。GKだけなんです。そしてもしも失敗したら、それもGKの運命だとバツ氏が言います。

「現代サッカーなんて、GKのミスは5台のカメラで撮られリプレイで分析され、一瞬の失敗を永遠に批判されるわけです。可哀想ですよ。だから私はGKたちに言うのです。外の世界の批判は無視しよう。GKに他人からのフィードバックは必要ない。私たちは一匹狼。理解されなくてもいいんだって」

 昨年はMLSのモントリオールで過ごしたバツ氏は今、ジュニア選手向けのGK教本を作っているそうです。リヨンの自宅にこもっていた彼の髭は白くて長かった。2カ月間もの外出禁止で本当の亀仙人になったバツ氏の言葉には、いつも以上の説得力がありました。

 またいつか、彼に会いたい。

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