サッカーの尻尾BACK NUMBER
再開されたサッカーの高揚感。
99年のテリーと20年のハーランド。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byDaiki Koga
posted2020/05/26 15:00
1999年、ファンにサインするデサイー。選手たちを直に観る、というのはいつでも贅沢な体験なのだ。
しばらくは画面越しでサッカーを。
2カ月間、ロンドン中のスタジアムで試合を見て回った。甘いベルカンプのトラップ。19歳のオーウェンは誰にも止められなかった。1999年の英国はすべてが新鮮で、サッカーを追いかける日々は驚きと感動に満ちていた。ファンとして外側から見ていたからかもしれないし、古き良き時代がそうさせたのかもしれない。
時が経ち、ふいにサッカーからひき離された2020年の初夏、あの頃の高揚感に近いものを胸に画面を見つめている。それが歓声のない試合であったとしても、そこには大きな喜びがある。
ドルトムントの風景やドイツ語の響き、がらんとしたスタジアムを走る若きノルウェー人を思い浮かべる。テレビ観戦にこれほど心を躍らせるのはいつぶりのことだろう。
スペインではサッカーが再開するまではもう少し時間がかかりそうだ。しばらくは画面越しにサッカーを堪能しよう。いつか戻ってくる週末を待ちわびて、少し離れたところから。