法政大で技術を磨き、J注目のGKに。

　第3GKだったはずの中野は、高3になるとレギュラーの座を掴み取った。試合に出ても、恐怖心がなくなるどころか、より高いステージでプレーすることへの欲求が大きくなっていった。厳しいとされていたトップチーム昇格の可能性も出てきた彼は、高3の夏に大きな決断を下す。

「（僕を）トップ昇格させるかどうかは、かなり議論されていたようで、結論はすぐに出ませんでした。その間に法政大の練習に参加させてもらったのですが、そこですぐに『来てほしい』と言われたんです。トップ昇格の可能性もゼロではありませんでしたが、法政大はレベルが高く、環境も抜群。ここでプロに行くよりも大学サッカーで4年間鍛えてからプロに進みたいと思い、トップの結論が出る前に法政大に決めました」

　大学入学時、身長は199cm。身長は伸び続けていたが、もう気にはならなかった。

「大学入ってからの方が『あのGKはでかいだけ』という声はめちゃくちゃあったと思います。実際に関東大学リーグはJユースや強豪高校出身の選手が多くて、そういう選手同士のコミュニティーがあるんです。僕は四国から出てきて、そのコミュニティーに入っていないので、『あのでかい奴は誰だ？』という声が聞こえるんです（笑）。『徳島ヴォルティスから2mのGKが来たらしいな』と僕のチームメイトにわざわざ聞いてくる選手もいて、『やっぱり俺は無名なのに、目立つんだな』と思いました」

　法政大ではセービング、足元の技術をさらに磨き上げた。すると、大学3年の昨季から不動の守護神の座を獲得。2m越えのスケールの大きなGKとして、多くのJクラブが注目する存在となった。

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景色も食事もサッカーも気に入った札幌。

「徳島（トップチーム）にはアミノバイタルカップの後に練習参加をしてからオファーをいただきました。リカルド・ロドリゲス監督の下、物凄くいいサッカーをするし、GKも足元を求められて、積極的にビルドアップに参加をするチームで本当に魅力的でした。故郷でもありますし、高校時代にトップに上がることが厳しかった僕がこうして評価をしてもらえたことは素直に嬉しかったです。

　でも、その後に参加をした札幌がとても魅力的で……。それにJ1でチャレンジしたい気持ちもありました。自分をより成長させるために徳島を離れる決断をして、実際に法政大ですごく成長できた。なのでプロでも新たしいところでチャレンジをした方がより成長できると思ったんです」

　練習参加を経て、札幌からすぐに正式オファーが届くと中野は即決した。

「もともと大学4年の4月までには決めようと思っていたので、それより早く決めるのは問題ありませんでした。昨年10月頭に札幌の練習に参加したのですが、まず驚いたのが練習場の雰囲気。遠くには雪山が見えて、目の前には石屋製菓のお菓子工場がドーンとあって、ちょっと異空間というか、景観が良くて独特の雰囲気がある。あと、選手寮はもちろん、名物も多く、ご飯がめちゃくちゃうまいです。何より回転寿司のうまさには衝撃を受けました。

　サッカー面ではミシャ（ミハイロ・ペトロヴィッチ監督）のサッカーは超攻撃的で、GKもどんどんビルドアップに関わることができます。僕のなかで『攻守に関われるGK』が理想なんです。まず攻めているときはDFラインが高いので裏のスペースをGKがカバーしないといけないですし、GKがボールを持ってサイドバックやCBにつけた時にもう一度リターンをもらえるようにパスコースを作ってサポートしたり、縦パスで攻撃の起点にもならないといけません。ミシャからは『常に動き続けて、考え続けてプレーしろ』と言われるので、そこはやりがいしかありません」

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