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イチロー、松井が惚れたバットの名工。
コロナ禍でもミニチュアは“即完売”。
posted2020/05/09 08:00
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
Kyodo News
鉄道好きの方なら養老鉄道という名をご存じだと思う。もっとも「聞いたことがない」という方も多いだろうから、簡単に説明する。岐阜県の揖斐駅と三重県の桑名駅を結ぶ全長57.5キロの鉄道会社で、桑名駅では近鉄に、大垣駅ではJRに接続している。
その養老鉄道が5月1日にミニチュアバットを販売した。令和1周年を記念した企画だが、どうしてバットなのかは製作者の名を見ればすぐに合点がいった。
久保田五十一(いそかず)さん。これまた野球好きの方ならご存じだと思う。イチローや松井秀喜らのバットを作り続けた名人である。ミズノの養老工場にバット工房があったため、久保田さんは沿線の養老町在住。2003年に厚労省認定の「現代の名工」に選ばれ、'05年には黄綬褒章を受章した。現在はミズノを退社した「元名人」ではあるが、地元の養老鉄道の依頼を快諾した。
ミニチュアバットは名前の「51」にこだわった。本物と同じアオダモを用い、51本を製作した。久保田さんの直筆サインにくわえ、シリアルナンバー、同社の社章を焼き印した。長さは20センチでお値段は5100円。同社のインターネットで販売したところ、即日完売した。
歴史を塗り替えた久保田さんのバット。
久保田さんは1943年生まれ。イチロー、松井の名を顧客に挙げたが、福本豊、衣笠祥雄、篠塚和典、落合博満、ランディ・バースらずらりと超一流が並ぶ。
'85年、伝説となるバックスクリーン3連発の1本目をバースが打ったのも、2004年にイチローがジョージ・シスラーの記録を塗り替えるシーズン262安打を放ったのも、松井が'09年のワールドシリーズでペドロ・マルティネスを打ち砕いたのも、久保田さんのバットである。