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村井満&原博実・緊急インタビュー。
Jリーグvs新型コロナ、決断の真相。
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byKiichi Matsumoto
posted2020/04/24 11:50
ガランとしたJリーグオフィスで対応してくれた村井チェアマン(右)と原副理事長。この壁の無いオフィスの作りにも、Jリーグの組織の風土が表れているのだ。
スポンサーからのありがたい言葉。
――今後の各クラブの財政についても、多くのファン・サポーターが心配しています。
村井 先が見えない状況ですから「Jリーグだけは安泰だ」なんて、全く言えません。我々だけじゃなくて、例えばスタジアムの周辺でホットドッグや唐揚げを作ってくださっていた方は、売り上げがゼロになっている。国民全員が危機的な状況の中で、今できることは、Jリーグの中で不要不急のものはなるべく切り詰めて、あらゆるものをクラブの支援に全面的に集中させるように準備しています。
クラブとしてキャッシュが必要ならば、分配金を前倒しで渡したり、いろんなルール改正を含めて対応しようとしています。現時点(4月6日時点)で現金の貸し付けや、分配金の前倒しが必要だと申し出てきているクラブはありませんが、これが長期化すると、問題が大きくなるのは間違いありません。
スポンサー、パートナーについては、明治安田生命さん(Jリーグタイトルパートナー)やヤマザキビスケットさん(リーグカップパートナー)が、2月の早い段階で「仮にどんな大会方式になっても、全クラブを支える」という声明を出してくれました。明治安田生命さんは、リーグだけじゃなく、全56クラブとスポンサー契約をしています。「それは継続するから」と。ヤマザキビスケットの飯島茂彰社長からは「かつてはナビスコカップ(現ルヴァンカップ)で、大会を中断したり、大会方式を大きく変えたりした時期もあったから。村井さん、俺らの方を見ないで判断していいよ」と連絡があったり。あのタイミングで、そんな言葉を言ってもらえる。本当にありがたいですね。
原 ファン・サポーターの人たちからは、できるだけ自分たちが応援しているクラブのスポンサーの製品を買おうという動きが出てきている。それで、クラブが助けられるんだから、と。本当にありがたいことですよ。
――選手やチームスタッフも不安を抱えていると思います。
原 こういう状況だからこそ、選手も監督も「サッカーはもちろん大事。でも、人間として本当に大事なことって何だろう」って考えていると思うんです。例えば僕の場合、今までこんなに家族と一緒に食事をする機会はなかった。僕が監督だったら、「今はまず、家族と自分のことを守ってほしい。医療従事者の方が懸命に戦ってくれている中で、我々は自分を見つめ直す時間がたくさんある。だからこそ、いろんなことを考えてほしい。そして、またチームとして活動できる環境になったら、今の気持ちを大事にしてプレーしよう」と伝えます。このコロナ禍のピークが過ぎて、次のフェーズに入れば、スポーツだけじゃなく、音楽も、その他のエンターテインメントも、必ず復活すると信じています。今年、完全に公平なリーグ戦は難しいかもしれないけど、コロナ問題が解決したときに、やっぱりサッカーは日常に必要だと思ってもらえるような、魅力的な試合をしたいですね。