才色健美な挑戦者たちBACK NUMBER
妹・真央とともに歩んだ、
浅田舞のフィギュアスケート人生。
posted2020/04/29 11:00
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph by
Kiichi Matsumoto
3歳からクラシックバレエを始めて、小学2年生の時に、私からやりたいと言ってフィギュアスケートを始めました。そこからはもう朝起きてから夜寝るまで、フィギュアスケートのための生活。それ以外のことは本当に何もしていませんでした。
中学生ぐらいになってくると、これだけ努力をしていても、いつか妹に抜かれるんだろうなという予感はしていました。
13歳の頃から指導を受けていた山田満知子先生が、表現することについて、演技や滑りには性格が出るとおっしゃっていたんですよ。例えば同じアルゼンチンタンゴを振り付けても、私が踊る場合と、妹が踊る場合では、雰囲気も変わるし、絶対に同じ演技にはならない。いくら作ろうとしても同じ雰囲気は作れないし、性格は隠せないっておっしゃっていて。
高校生になると、妹の方が上手になってきて。
それって生まれた時からの育ち方とか、両親との関係とか、お姉ちゃんなのか、妹なのか。何を食べてきて、どんな生活をしてきたのかという積み重ねなんですよね。ジャンプや滑りの技術は練習すれば進化しますけど、雰囲気は高めようと思って高められるものではない。だから、自分を変えて、演技をする必要はないというのはすごく勉強になりました。最近始めた社交ダンスでも、この教えは生きていて、無理をして演じるのではなく、ありのままの自分でナチュラルに踊ればいいのかなと思っています。
というのも、高校生になると、妹の方が上手になってきて、ついに順位が逆転したんですね。
生活のすべてをフィギュアスケートに注いでいたので、若かった私はその事実を乗り越えられなかった。それまでは好き嫌いという感情ではなく、生活の一部だったフィギュアスケートに対して、私はなんでやっているんだろう、なんでやらないといけないんだろう、という「嫌い」の感情が出てきてしまった。