イチ流に触れてBACK NUMBER
最多得票のイチローさえも脇役に。
カル・リプケンJr.、最後の球宴。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2020/04/21 11:30
2001年のメジャー・オールスターゲームのファン投票で最多得票のイチロー。試合前には自身が表紙になったプログラムにサインする場面も。
娘にリプケンの偉大さを説く父親。
このとき、筆者は客席に増設された臨時記者席にいたのだが、前に座る親娘ファンの存在に気がついた。年の頃が7、8歳と思われる娘に父はことの背景を一生懸命に説明している。少女は父の言葉から、リプケンの偉大さ、周囲が払った敬意、ファンの反応、すべての意味を理解したのだろう。自ら立ち上がり拍手をおくりだした。
そして、クライマックスは3回だった。リプケンがパク・チャンホ(当時ドジャース)から先制の本塁打を放つと場内は最高潮。現役最後の球宴で本塁打を放つリプケンの千両役者ぶりにも参ったが、先の少女はリプケンの偉大さを肌で実感できたのだろう。目を輝かせ声援を送り、親娘でハイタッチを繰り返していた。
親から子へ語り継がれたカル・リプケンの偉大さ。こんなところにも、米国では野球がナショナル・パスタイム(国民的娯楽)と云われる所以があるのだろう。月並みではあるが、ファンが一喜一憂し、その素晴らしさを語り合う野球が1日も早く戻ってくることを願う。