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浅田真央、引退発表から3年──。
今こそ笑顔と言葉の意味を再考する。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAP/AFLO

posted2020/04/10 11:50

浅田真央、引退発表から3年──。今こそ笑顔と言葉の意味を再考する。<Number Web> photograph by AP/AFLO

ブログで引退を発表してから2日後、記者会見を開いた浅田真央。晴れやかな笑顔を見せていた。

どのような質問に対しても、誠実に。

 会見では、もう1つ、浅田が過ごしてきた時間の中身を思わせる要素があった。

 長い時間にわたる会見中、用意したメモの類に目を通すこともなく、思わぬ角度から来るものも含め、どのような質問に対しても、気持ちを誠実に言葉に置き換え、伝えていたことだった。

 中学生で脚光を浴びた頃、記者会見やいわゆる「囲み取材」では、まだ言葉が足りないところもあったし、舌足らずに近い面があった。歳相応であった。中学生なのだから、当たり前のことだ。

 あれから10年以上のときを経た会見での姿は、年齢をただ重ねたからばかりではなかった。真剣にものごとに向き合ってきたからこそ磨かれた、受け答えにほかならなかった。

 昨今、記者会見とは名ばかりの、形式だけで誠実に伝える姿勢のない類が珍しくないことを考えれば、あのときの会見で見せた姿勢は、より輝きを増す。

 それも含め、努力の人、真剣な時間を過ごしてきた人、という印象を残す会見であった。

 それまで大会などで何度も言葉にしたのと同様、引退会見でもファンをはじめ支えてきてくれた人々への感謝を語った浅田はのちに、「今まで応援して下さった方々への感謝を込めて」、アイスショー「サンクスツアー」を開始。

 一貫した姿勢もまた、浅田真央らしくあった。

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浅田真央

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