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浅田真央、引退発表から3年──。
今こそ笑顔と言葉の意味を再考する。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAP/AFLO
posted2020/04/10 11:50
ブログで引退を発表してから2日後、記者会見を開いた浅田真央。晴れやかな笑顔を見せていた。
「何も、悔いはありません」
最後となった全日本選手権は2016年12月のこと。14度目の出場で初めての二けた順位となる12位で終えていた。
復帰するとき、2018年の平昌五輪を目指すと目標を掲げていたから、志半ばで退くことになった。
でも、浅田は晴れやかだった。どこまでも、笑顔だった。
その理由は、浅田自身の言葉にあった。
「何も、悔いはありません」
あらゆる面で努力を惜しまず。
あらためて足跡をたどれば、トップスケーターへと上り詰め、長く第一線で戦うことができた理由は、努力にほかならないことが分かる。
小学生時代、周囲も認めるほど練習に熱心であったし、その後も数々の選手や指導者が、手抜きのない練習について語ってきた。二十歳を過ぎたあとには、1日に5部練習を実行することもあったという。
しかも、ソチ五輪のシーズンが終わったあとの休養を除けば、空白を生まずに競技を続行してきてのことだ。
「体力も気力も全部出し切った」
会見では、こうも語った。
悔いなく退くことができる心境に達しえたのは、あらゆる面で努力を惜しまず重ねてきたからこそだったろう。
また、会見ではこのようなことも思わずにいられなかった。
アスリートは結果を、成績を出すことを目標にする。でも目指すもの、重要なことはそれだけではない。結果を目指し、自身の成長を期して取り組むその過程に価値がある。
思うような成績が出ず、目標とする結果に達しない時期も何度もあった。それでも悔いなく競技生活から離れることができたのも、真摯に時間を過ごしてきたからにほかならなかった。