箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
箱根経験者が席巻するマラソン界。
急激なレベルアップはなぜ起きた?
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2020/03/29 11:40
各大学のスカウト網も発達し、有望な高校生ランナーは漏れなく箱根強豪校から声がかかる。箱根は才能の見本市なのだ。
箱根のレベルは上がり続けている。
これはまず、箱根のレベルが上がっている影響が大きい。
3年前、青学大の箱根優勝タイムは10時間57分39秒だった。それが2019年は、東海大が10時間52分09秒の大会新で優勝した。そして2020年は、青学大が10時間45分23秒の大会新で優勝し、わずか2年で12分もタイムが縮まっている。
また、今年の箱根に限って言えば10区間の内、7区間で区間新が出ている。中でも2区の相澤晃が出した区間新はモグスの記録を11年ぶりに更新した破格のタイムで、3区、4区、5区、6区の区間新は前年度の記録を破っての記録だ。この1年での高速化が、総合タイムや区間新の多さからも顕著にみられる。
これは厚底シューズの影響もあるが、個人の力が上がってきたからに他ならない。それは、各大学の練習の質が非常に高くなっているからでもある。
練習メニューも随分かわった。
従来は「走れ、走れ」で単純に距離を踏むだけだったが、今は海外などからも情報を得て、練習メニューをアップデートするようになった。
より速く、強くなるために様々なメニューを取り入れて、各大学とも独自に強化育成を図っている。東洋大の酒井俊幸監督は、相澤らトップ選手には「世界を目指せ」と常にはっぱをかけ、トラックの練習では1キロ2分50秒ペースを維持させるなど、卒業後を見据えて厳しいトレーニングを課していた。
そこで個人のベースが作られ、実業団に入ってから自分に足りないものを補う。そうやって自分の武器に磨きをかけることで総合力を増し、強い選手に成長していく。設楽、服部はそういう指導から生まれてきた選手だ。
科学的なサポートも増え、例えば練習後に血中酸素飽和度(SpO2)を計り、その数値を図表にして自分の成長を可視化できるようにしているところもある。また、コンディショニングやフィジカル面の強化では専門のトレーナーがついて指導するなど、全体的なトレーニングが高度に細分化されてきたイメージだ。