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元日本代表が語る“ホッケー世界地図”。
さくらジャパンのライバルはどこだ? 

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別府響(文藝春秋)

別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu

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photograph byHideki Sugiyama

posted2020/03/27 11:00

元日本代表が語る“ホッケー世界地図”。さくらジャパンのライバルはどこだ?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

圧倒的な実力に陰りが見えつつある女王・オランダ。本番での覚醒やいかに。

注目したいアルゼンチン独特のリズム。

 一方で私が、ライバル国で最も注目しているのが南米のアルゼンチンです。

 アルゼンチンの選手は個人技のアイディアが豊富で、独特のリズムというか、こちらが予測しにくいプレーをしてきます。気迫あふれるプレーも持ち味で、混戦から個人技の技量とスピードで点を獲ってくる。理屈ではない、“感覚派”の選手が多いイメージです。

 数年前まではルシアナ・アイマールという、サッカーで言えば(リオネル・)メッシのような選手を擁していて、基本的にはアイマールを中心としたチーム作りでした。ところが彼女が2014年に引退すると、逆に組織としての完成度がどんどん上がっていった。昨夏の試合を見た時には、伝統の個人技に加えて、チームとしての完成度の高さにも驚かされました。

 あとは同じアジアからはダークホースとして、インドの存在が不気味ですね。世界ランクは9位ですが、国内で競技の人気が高いこともあって国を挙げてのバックアップ体制がすごく充実している。実際の大舞台でひとつ勝つようなことがあると、一気にチームが流れに乗るような気がしています。身体の面でも私たちが戦っていた頃とは全然変わっていて、アスリートらしい強靭なフィジカルに変貌を遂げています。

個の勝負になっても不安はない。

 では、そんなライバル国たちを相手にさくらジャパンはどう戦うべきか――。

 日本の一番の武器はやはり“運動量”だと思います。ゲームの終盤でも前線から全力でプレスをかけられる、そのフィジカルは長所でしょう。

 ホッケーはスティックを使う競技ということもあり、競り合いが多い他のチーム競技とくらべて、身体の小ささが不利になりにくい競技だと思います。だからこそ小柄な日本チームが、大きい選手を相手に勝負を仕掛けているシーンは、ぜひ見てほしいですね。

 かつての日本チームは組織力の高さで世界と勝負していました。ですが、ホッケーという競技は突き詰めると結局最後は“個”の勝負になる瞬間があるんです。チームの力だけに頼っていても絶対に強豪国には勝てない。そういう部分を理解した上で、いまのさくらジャパンの選手たちは個人技の技術も伸ばしているように思います。ボールを受けた時に不安そうな顔をする選手がひとりもいないところに成長を感じますね。

【次ページ】 ライン際の「3Dドリブル」に要注目。

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