フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
クリス・リードを元コーチが悼む。
「彼は日本代表を誇りにしていた」
posted2020/03/18 15:30
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Jamie Squire/Getty Images
我が目を疑う知らせだった。
日本時間3月15日の午前0時20分、米国デトロイトでクリス・リードが心臓突然死で急逝。わずか30歳という若さだった。
クリス・リードは姉のキャシーと一緒に、今年1月にオープンしたばかりの「木下グループ・関空アイスアリーナ」で、木下アカデミーアイスダンススクールを開設したところだった。
これから本格的に日本で後輩の育成に力を注ぐため、トレーニング拠点だったデトロイトのアパートの荷物を整理して日本に送った直後だったという。
日本アイスダンスの要だった。
長い間、細身の体で日本のアイスダンスをパートナーと共に牽引してきた。
2006年に姉のキャシー・リードと組んで全米ノービスで優勝した後、日本スケート連盟に所属を変更。そしてキャシーと7度、2015年からは村元哉中と組んで3度、合計10回の全日本選手権タイトルを手にした。
国別対抗戦やソチオリンピックから始まった団体戦では、競技人口が少ないカップル競技は日本のネックであった。その中でクリスとそのパートナーは、日本のアイスダンスの要となってきた。
3度オリンピックに出場し、村元哉中と出場した2018年四大陸選手権ではアジアのアイスダンサーとして史上初の銅メダルを手に。また同年世界選手権11位も、日本のアイスダンサーとして歴代最高の成績だった。同年夏に村元とのコンビを解消し、昨年末に現役引退を発表していた。
筆者が記憶しているクリス・リードは、いつも演技の直後で顔を汗で光らせていた。そしていつもパートナーと視線を交わしながら、きらきらと目を輝かせて笑顔を絶やさなかった。