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<ベイスターズをのぞいてみよう!>
三原代表が見据えるDeNAの未来。
posted2020/03/14 20:00
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
Hirofumi Kamaya
昨オフ、球団の舵取りをするトップの一言は、驚きとともに大きな反響を呼んだ。
2018年シーズン途中に移籍をしてきた伊藤光は、昨年10月の契約更改の際、三原一晃球団代表に「僕はベイスターズに救われました」と告げると、「なに言ってんだ。おまえにチームが救われたんだよ」と、逆にお礼を言われたという。心に響くエピソード。編成の最高責任者である球団代表は選手に非情な宣告をしなければならない立場でもあるが、一方で三原代表はチームのために尽力してくれた人間に対しては心を込めて対応している。
伊藤以外にも、例えば昨年トミー・ジョン手術をした田中健二朗に対し「功労者だから」と、育成契約を申し出るなど、DeNAのフロントからは選手をチームの貴重な財産と捉えている姿勢が見て取れる。
伊藤の一件について三原代表に尋ねると「個人とのことですし、わたしとしてはオープンにして話すことはないのですが……」と苦笑して語りつつも、自身の選手たちに対する姿勢を教えてくれた。
3~5年後を考えるのが仕事。
「これは高田繁前GMの考えでもあるのですが、わたしとしては、同じ野球をやるのであれば“横浜でやりたいよね”という球団にしたいと思っているんです。ですから、環境を整え選手たちがやりたいようにやらせてあげたい、という気持ちは常に持っていますね」
三原代表はDeNA本社で長年のあいだ人事畑を歩み、2013年1月にベイスターズへ異動。以来、事業本部長等を務め、2016年10月から球団代表を務めている。編成のトップとしてプロ野球出身者ではない異例の抜擢であったが、約2年間ものあいだ高田前GMの傍らに付き、チーム運営のすべてを学んだ。
「高田前GMには徹底的に教えていただきました。とくにおっしゃっていたのは『目の前の1勝を見るのはユニフォームを着ている人たちで、3~5年後のことを考えるのがわれわれの仕事なんだ』と。つい現場にいると目の前の結果を求めがちなのですが、この数年、球団代表を経験したことで、それが本当にダメなことだということを理解することができました」