フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
女子フィギュアを席捲するロシア勢。
バービー人形のような13歳の新星。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAkiko Tamura
posted2020/03/11 19:00
フィギュア世界ジュニア女子、(左から)2位ダリア・ウサチェワ、1位カミラ・ワリエワ、3位アリサ・リュウ。
対照的な練習環境のアリサ・リュウ。
どのような魔法を使っているのかと思いたくなるほど、次から次へと才能ある女子が出てくるエテリ・トゥトベリーゼのチーム。その秘密の一つはもちろん、大勢のレベルの高いスケーターたちが競い合うようにして日々トレーニングをしていることである。
その点、今回3位に食い込んだアメリカのアリサ・リュウは全く対照的な世界にいる。
「今トレーニングをしているリンクには、シニアの選手はいません。悪い意味で言っているのではないけれど、私がベストスケーターではないかしら」
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練習環境について聞くと、おっとりとそう答えたリュウ。
彼女は2年連続して全米選手権で優勝を果たしているので、リンク内でベストなスケーターだというのは少しも驚きではない。だが、「どちらかというと、ちょっとパブリックリンクのような雰囲気なの」と言ったのには少し驚いた。
アメリカでパブリックリンクといえば、リクリエーション用の、一般人が遊びで滑るリンクのことだ。
4ルッツと3アクセルが跳べる世界唯一の女子。
またリュウのコーチのローラ・リぺツキーは、ミシェル・クワンなどを育てたフランク・キャロルの生徒だったというが、コーチとしては比較的無名な存在である。
振付師には世界でトップの1人であるローリー・ニコルがついているが、リュウの表現力はロシアの女子たちに比べるとまだ幼く、良く言えば伸びしろがたくさんある。
「順位はとても満足していますし、この大会に出られてとても嬉しいです」と笑顔で語ったリュウ。4回転ルッツと3アクセルの両方を持っている世界唯一の女子でありながら、3位に終わったことも彼女にとっては「失敗」ではないらしい。
一分の隙も見せないロシアの女子たちと、アメリカの希望の星と言われながらも比較的おっとりと見えるアリサ・リュウ。
この少女たちがどのようにこれから育って競い合っていくのか、楽しみである。