表示以上の速度を感じる球威。

“セットアッパー”でいけるじゃないか！

　そんな期待が湧き上がったのは、ルーキーなのにジタバタせずに、堂々「ストライクゾーン」で勝負にいって、球威で圧倒していたからだ。

　スピードガンでは140キロ台前半でも、桑原とオースティンの差し込まれ方が「体感速度150キロ」を物語っていた。

　もともと、腕の振りにイキの良さと生命力があふれるサイドハンドだったが、難点だった余計な気負いや力みが気持ち抜けて、フォーム全体のゆったり感にすり替わったように見える。  

　腕を振るというより、腕が振られている。そんな球持ちのよさが、打者のタイミングを余計難しくしている。

　このリズムが体に染み着けば、一軍の中継ぎで十分使える。

　守護神・森唯斗に、中継ぎ勢は昨季台頭した高橋純平に、股関節の故障から復活のサファテ、嘉弥真新也、モイネロの左腕2枚。

　リリーフ陣は12球団随一の陣容なのかもしれないが、積年奮投の「勤続疲労」がいつ顔を出すかもしれず、実際に、昨季ペナントレース65試合に、プレミア12で熱投を繰り返した甲斐野央が、今季は戦列を離れている。

“席”はある。

最近ではほとんど見ない投げっぷり。

　思い出した場面があった。

　一昨年、津森宥紀、大学3年生の6月。

　東北福祉大は全日本大学野球選手権大会で、「全国」を制した。

　その決勝戦だ。4点のリードを背負って7回からマウンドに上がった津森宥紀。そこからの9人を完璧に抑えて、14年ぶりの「全国」を獲得した。

　投げた3イニング、私の目には、全球ストレートに見えた。

　全球145キロ前後をマークした快速球の速さ、強さもすばらしかったが、それ以上に、“狂気”すら伝わってくるようなとんがった投げっぷりに驚いた。

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