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パの新人王に推す、狂気の右投手。
津森宥紀を3位で取れたSBの幸運。
posted2020/03/11 11:40
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
2019年秋のドラフト会議でのことだ。
1位指名の12人で、大学生投手は森下暢仁(明治大)だけが指名されただけだったのに、2位では「学生投手」が次々に名前を呼ばれる。
2位が始まってすぐに吉田大喜(日本体育大)がヤクルトに、直後に、橋本侑樹(大阪商業大)が中日に、坂本裕哉(立命館大)がDeNAに、関西学生球界を代表するサウスポーが続けて指名され、さらに、3位の折り返しでは、独立リーグ1年目のサイドハンド・松岡洸希(埼玉武蔵ヒートベアーズ)までが指名された。それなのに、あのとんがった「サイドハンド」の名前がなぜ挙がらないのか?
そう思った途端に、やっと出てきた。
第3回選択選手、福岡ソフトバンクホークス、津森宥紀、21歳、投手、東北福祉大学。
3位指名なら「上位」なのだろうが、「大学生投手」というカテゴリーで考えれば“5人目”。そんなもんか……? と首をひねった次の瞬間、ソフトバンクがまた儲けたな、と感心したものだった。
オープン戦で走っていたまっすぐ。
キャンプのブルペンで張りきり過ぎてパンクしなければよいが、そんな心配をよそに、宮崎での1カ月を「A組」で乗り切った津森宥紀。
3月7日、DeNAとのオープン戦で3試合目のマウンド。
8回1死からの登板で、桑原将志、新外国人・オースティンという2人の右打者をわずか4球で、ドン詰まりの内野ゴロと内野フライに打ち取ってみせた。
おそらく、4球ともまっすぐ。自慢のベストボールでガンガン勝負にいって、うるさい桑原と、前の打席でオープン戦4弾目を放ったオースティンに、「自分のスイング」を許さなかった。