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実況アナから見た無観客試合の景色。
静寂な球場で野球の魅力を伝える。
posted2020/03/05 11:50
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph by
Kyodo News
オープン戦実況後、僕のSNSにこんなメッセージがいくつも届いていました。
「プロ野球選手って、こんなにも声を出しているんですね。驚きました」
「野球をやっている息子と中継を観ていて非常に勉強になりました」
「コーチからの声で、オープン戦での生き残りをかけたプロの必死さが伝わってきました」
3月に入った日本プロ野球界。今年もオープン戦は南から本州、関東に戻ってきました。僕も3月1日にZOZOマリンスタジアムの放送席に座らせていただき、ロッテ対楽天の実況を担当しました。
放送席から見えた景色は、いつもとまったく違っていました。
心のスイッチ、戸惑う瞬間はあった。
試合前の練習を取材し、両監督の囲み取材を行い、放送席に上がり、中継打ち合わせへ。普段であれば打ち合わせの時間には、球場が開門し、場内アナウンスが流れ、ファンの声援、カメラシャッターを切る音、売店へ向かう足音……野球場ならではの様々なノイズが耳に入り、「さあ、いよいよゲームが始まる」という雰囲気になります。
しかし、今季は、その雰囲気をまったく感じられないオープン戦となりました。
新型コロナウイルスの影響で、2月29日以降のオープン戦は全試合無観客でのゲーム。いつもと違う時間の感覚に、心のスイッチの入れ方に戸惑う瞬間がありました。
ただ、プロ野球はプロ野球。日本で最も多くのファンを抱えるプロスポーツです。無観客といえど、野球中継を観てくれているファンはカメラの向こうにたくさんいます。
「中継をご覧の皆さんも、是非、画面の向こうから声援をお願いします」
ロッテの名物でもある谷保恵美さんのアナウンスが、心に沁みました。