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高田千明「走り幅跳びに挑戦したい!」
突然の転向に大森コーチは何を思った? 

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松岡修造

松岡修造Shuzo Matsuoka

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photograph byNanae Suzuki

posted2020/03/09 07:30

高田千明「走り幅跳びに挑戦したい!」突然の転向に大森コーチは何を思った?<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

高田千明さんと大森盛一コーチのトレーニング風景。1本の紐で信頼は繋がっている。

「1人で真っ直ぐ走るだけでも無理なのに……」

大森「それだけの覚悟があるかを確認したかったんです。それでも本人がやるというので、僕も腹を括って、これまで幅跳びの選手がどんな練習をやっていたか、学生時代の練習風景を思い出すことから始めたんです。

 僕の母校である日大には元日本記録保持者の森長正樹、やはりオリンピックにも出場した渡辺大輔らがいて、彼らがやっていた練習の中からできそうなことを探りながら。まずは踏み切りの練習から始めたんだよね」

高田「最初は何メートル離れたところから助走すれば良いかも分からなくて、とりあえず『10歩で行け』と。でも、行けるわけないんですよ。1人で真っ直ぐ走るだけでも無理なのに……」

松岡「大森さんも経験したことがないからね」

「いざ跳んだら、砂場にたどり着いていなくて」

高田「今までは大森さんが隣にいたから走れたけど、音だけを頼りに真っ直ぐ走るって結構なことだよって。しかもトップスピードに乗ってジャンプをしないといけないから、最初は『怖い、怖い』って言い続けてました(笑)」

松岡「禁句をそんなに。まず走るだけでもそれほど大変なら、砂場に着地できないこともあったんじゃないですか」

高田「いざ跳んだら、砂場にたどり着いていなくて、助走路の上で何度も『痛い!』って叫びました。大森さんに訴えたら、『幅跳びで足が痛くなるのは宿命だから』って(笑)。最初の頃は跳ぶことすらできなくて、何度も砂場をそのまま走り抜けてました」

松岡「大森さんはコーチであり、跳ぶ方向や踏み切りの位置を声で教える“コーラー”でもあるんですね。コーラーを務める方は、どこに立っていても良いんですか」

大森「基本は、踏み切り板の後ろか選手が走ってくるその延長線上にいて、真っ直ぐ走れるように手拍子などでサポートする。どんな声をかけても良いし、カスタネットを鳴らすコーラーも海外にはいます」

松岡「まさに選手の手となり、足となる。選手を目指すにはまず、コーラーを見つけないといけませんね」

大森「おっしゃる通りで、今はコーラーは基本、ボランティアで成り立っているんですけど、選手からしてみればお金を払ってでも伴走について欲しい存在なんです。だからこれからは時給を出すとか、双方のマッチングをするとか、制度を整えていく必要があると僕は思ってます」

【次ページ】 幅跳びの日本記録保持者の指導も。

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