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バスケ日本代表、五輪へリスタート。
台湾戦快勝でも「上を見続ける意識」。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byYoshio Kato/AFLO
posted2020/03/01 20:00
宇都宮の同僚、田臥勇太の「0」番を背負い代表デビューしたロシター。先発出場でチーム最多タイの17得点をあげた。
「田臥勇太がいなかったら今の自分はいない」
もちろん、ディフェンス改革の効果は、オフェンスにも表れていた。96得点という数字だけではなく、登録メンバー12人全員が得点した。
「田臥勇太がいなかったら今の自分はいないですし、彼がいなかったら、日本に来る機会がなかったと思うので、彼へのリスペクトの意味を込めて0番をつけています」と、田臥のトレードマークである0番を背負った理由を明かしたロシターは、宇都宮ブレックスにいるときと同じように、茶目っ気のある笑顔でこう語った。
「コーチがインテンシティを求めているので、80%はファウルをとられるかもしれないような、ギリギリのディフェンスを普段の練習からしてきました。それが今日の試合のオフェンスの良い準備にもつながったんじゃないかなと思いますね」
だから、2月からリスタートを切った日本代表の取り組みは上々のものだ、とまとめられそうなところだったが……。
「僕らは上だけを見続けてやっていきます」
この結果に一喜一憂しない選手が、いた。
「特別に良かったとか、特別に悪かったという感想は、個人的にはあまりないんです。W杯を戦ったからこそ、なおさら……」
台湾の実力とバスケットボールに取り組む姿勢をリスペクトしながら、相手をけなす意図がないことを念押して、田中はその真意をこう話した。
「あのW杯を経験して、どうしなければいけないかを自分たちで考えて、取り組んでいる最中です。これをやり続けることによって、今まで倒してきた相手との差はどんどん広がっていくし、日本はもうアジアで上の位置にずっといなきゃいけないレベルにあると思います。だから、僕らは上だけを見続けてやっていきます」
成果が出たことに満足するのではなく、成長の過程にあることを実感して、走り続けないといけない。
東京オリンピックで中心の1人として期待される選手が、そう考えていたことが、何よりの収穫だった。
代表での活動は年間に数十日だけである。
そこで気づいたことや感じたことを、クラブチームに持ち帰って、練習や試合で表現し「続けて」いく。
それこそが、44年ぶりにオリンピックの舞台で戦う日本代表に求められていることなのである。