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レスリング文田、五輪第1シード確定。
「投げてナンボ」で金を目指す。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byKYODO
posted2020/02/28 11:30
昨年のアジア選手権では敗者復活戦を勝ち上がっての銅メダルだった文田。見事雪辱を果たし、3年ぶりの優勝を果たした。
背骨の柔らかさを生かした豪快な「反り投げ」。
初出場した'17年世界選手権では、グレコローマンの日本選手史上最年少となる21歳8カ月で金メダルを獲得した。背骨の柔らかさを生かした豪快な「反り投げ」を2回戦で決めたことで勢いに乗り、優勝まで突っ走った大会だった。
それ以降は、勝てば勝つほど相手は投げを警戒するようになったが、今回はグラウンドの強化をして大会に臨んだことが功を奏した。
ただ、東京五輪で見せたいのは、やはりスタンドだと力を込める。
「自分が好きというのもありますし、グレコローマンの最大の魅力はスタンドからの投げであり、大きな展開だと思います。そこにはこだわってこれからもやっていくつもりです」
今回のアジア選手権では、東京五輪で投げ技を見せるための布石を打つことに成功したと言えるようだ。「ローリングをメインに出したので、今後はスタンドで勝負してくる選手が増えるかなとは思っている」と文田は言う。
「自分にとってはすごく良い重荷」
そのうえで、1周回った今、感じているのは、スタンドの強化の必要性である。
「今の日本は、自分も含めてグラウンドでやられることが多いのでグラウンドに力をいれている。
でも、僕個人としては、スタンドのよりテクニカルな部分の強化を重点的にやりたい。試合展開というところではなく、技術でもう一歩先を補えるような練習をしていきたい」
手にすることが確実となった第1シードに関しては「オリンピックでは結果と内容にこだわって試合をし、第1シードにふさわしい選手になりたい。自分にとってはすごく良い重荷。気持ちも引き締まるし、良い緊張感を持てると思う」と歓迎する。
東京五輪のマットで豪快な反り投げを見せたとき、文田は目標の金メダルに近づいていくはずだ。
かつて自分があこがれた輝きあるレスラーの姿を、今度は自分が見せる番。文田は一歩一歩、前進している。