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非エリートが154連勝王者に勝利。
柔道・影浦心「自分を信じる力」。

posted2020/02/17 11:30

 
非エリートが154連勝王者に勝利。柔道・影浦心「自分を信じる力」。<Number Web> photograph by AFLO

リネール(左)を破った影浦。リネールは2010年9月、上川大樹(ロンドン五輪日本代表)に敗れて以来約10年ぶりの黒星となった。

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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 柔道で、快挙が生まれた。

 2月9日に行なわれた国際大会、グランドスラム・パリの100kg超級3回戦で、影浦心(24、日本中央競馬会所属)が、テディ・リネールを破ったのである。

 リネールと言えば、ロンドン、リオデジャネイロ五輪の同階級を連覇、世界選手権同階級で2007年から2017年まで8連覇(2018、2019年は本人のプランもあり出場していない)を達成している名選手だ。

 しかも、長期にわたり無敗を誇り、国際大会の連勝記録を154連勝まで伸ばしていた。

 フランス生まれの30歳はまさに世界柔道界のスーパースターといえる。日本柔道界にとって、打倒リネールは長年の悲願であった。それを影浦が実現したのである。

延長40秒に劇的な勝利。

 金星をあげた試合は、両者、拮抗した。リネールは204cm、影浦は179cm。超級ゆえに100kgを超えれば上限はない。仕方ないとはいえ、同じ階級とは思えない体格の両者は、しかし、互いに譲らない。

 ともにポイントをあげられず、指導もないまま、延長戦に突入する。
試合が動いたのは延長40秒だった。リネールの内股を影浦は透かすと、リネールの身体は畳に転がった。劇的勝利をつかんだ瞬間だった。

 影浦は決勝で敗れ優勝こそ逃したが、大金星は、決勝での敗北を補ってあまりあるインパクトを残した。

「歴史に名前を刻めました」

 影浦自身も、喜びを素直に表した。

 この大会には期するものがあった。

【次ページ】 影浦は一番手と目される選手ではない。

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